株式会社富士経済は、データセンター関連や半導体関連など高付加価値用途の広がりとともに、中国メーカーの台頭を受けた日本や欧米メーカーの事業戦略や商品開発が注目される、機能性コンパウンドの世界市場を調査しました。その結果を「2026年 コンパウンド市場の展望とグローバルメーカー戦略 上巻」にまとめました。
この調査では、フィラーや添加剤、着色剤を樹脂に配合することで機能性を付与し、配合比率の変動で多種多様な物性を発現する機能性コンパウンドとして、汎用樹脂コンパウンド5品目、汎用エンプラコンパウンド7品目、スーパーエンプラコンパウンド7品目、エラストマーコンパウンド4品目、熱硬化性樹脂コンパウンド3品目の世界市場を分析し、将来を予想しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2026年 コンパウンド市場の展望とグローバルメーカー戦略 上巻」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
機能性コンパウンドの世界市場

主要用途である自動車やスマートフォン、PC、家電製品などの最終製品のグローバル生産台数は伸びが鈍化していますが、自動車分野では電装化に伴うコネクターや冷却系部品、ECUなど、また、電気電子分野ではデータセンターのサーバー関連でSMTコネクターや電力・通信ケーブル、冷却ファンなどでの使用が増えており、それらがけん引することにより、今後も市場拡大が予想されます。
汎用樹脂コンパウンド
機能性コンパウンド市場の8割弱を占めています。中でもPVC(ポリ塩化ビニル)の市場規模が最も大きいです。2025年は自動車分野の需要が回復に向かったため、PP(ポリプロピレン)やABS(アクリロ二トリル、ブタジエン、スチレンの3種類のモノマーから構成)が微増、PVCやPE(ポリエチレン)も電線ケーブル用などで伸びています。2026年以降は自動車生産台数の伸び悩みが懸念され、PPなどは苦戦が予想されますが、PEは電力用ケーブルや通信用ケーブルで使われるため、新興国の活発なインフラ投資を受けて、毎年3%程度の伸びが期待されます。PVCも電力ケーブルや自動車の電装化に伴いワイヤーハーネスで需要が増えるとみられます。
国・地域別では、PPやPVC、ABSなどは中国が最大の需要地です。今後、人口増加や高い経済成長が続く東南アジアやインドなどの新興国での需要増加が予想されます。
汎用エンプラコンパウンド
現状は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PA66(ポリアミド66)などの市場規模が大きいです。中でも、PBTは車載カメラやミリ波センサーの筐体向けや、コネクターなどでの使用増加が期待され、毎年3%前後の伸びが予想されます。また、市場規模は小さいですが、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)は、EV搭載のLiB用ケースや太陽光発電用ジャンクションボックスなどで使用が増えるとみられるます。
m-PPEやPBTなどは中国が最大の需要地です。PA6(ポリアミド6)やPA66は北米や欧州で自動車の電装化に伴う部品や民生機器のコネクター類を中心に使用されています。
スーパーエンプラコンパウンド
PPS(ポリフェニレンサルファイド)の市場規模が大きく、自動車分野のPCU(コンデンサケース、バスバーなど)や各種電装部品、冷却配管、また、住設分野での水回り部品での使用が多いです。PA6T(ポリアミド6T)、LCP(液晶ポリマー)なども車載電装部品やパワー半導体関連、サーマルマネジメント対策部品向けが好調、また、新規用途としてデータセンター周りで使用が増えています。今後、大きな伸びが期待されるのはPA9T(ポリアミド9T)で、EV用の車載電装品やデータセンターのサーバーで使用されるSMTコネクターなどで需要が増えています。
スーパーエンプラは他カテゴリーと比較して日本の需要が大きいです。特に自動車電装部品やコネクター類向けでPPSやPA6Tなどの使用が多いです。
エラストマーコンパウンド
TPV(架橋型オレフィン系エラストマー)やTPC(ポリエステル系エラストマー)は自動車分野の比率が高く、加硫ゴムからの切り替えやEVの普及などにより、堅調な市場推移が予想されます。水添TPSコンパウンド(水添スチレン系エラストマーコンパウンド)は、日用・雑貨品や土木建築など幅広く使用されており、今後は新興国での需要増加が期待されます。
自動車以外にも家電製品や日用品などの生産規模が大きい中国が最大の需要地です。また、北米は自動車や土木建築などで幅広く採用されていることや、用途開発で先行したことにより、需要が大きいです。
熱硬化性樹脂コンパウンド
SMC/BMC(不飽和ポリエステル樹脂成形コンパウンド)が7割以上を占めています。今後は新興国のインフラ需要を中心に、微増で推移すると予想されます。半導体パッケージで使用されるEMC(エポキシ樹脂成形コンパウンド)は、市場規模は小さいですが、半導体市場の拡大に伴い大きく伸びるとみられます。
半導体パッケージや自動車の生産台数が多い中国の市場規模が大きいです。今後は東南アジアなどの新興国の需要増加も予想されるます。
◆注目個別市場サマリー
1.PA9Tコンパウンド(ポリアミド9Tコンパウンド)

電気電子分野ではSMTコネクター、自動車分野で各種ギアなどの摺動部品や燃料チューブをはじめとした燃料系部品、また、電装部品での使用が増えています。
2025年は、データセンターのサーバー関連製品向けでの大幅な伸びや、自動車分野での需要増加により、市場は拡大しています。2026年以降は、電気電子分野の堅調な需要、また、自動車分野の新規用途に支えられ、市場は10%近い成長が続くと予想されます。特に電気電子分野ではサーバー関連のDDR5メモリ(ダブルデータレート5)のコネクター向け、自動車分野ではxEV関連の冷却部品や車載電装部品向けなどの高機能グレード製品が大きく伸びるとみられます。
中国が最大の需要地です。SMTコネクターやLEDリフレクターなどの電気電子分野のほか、EVの生産台数増加で自動車分野の需要が旺盛で、今後も市場をけん引するとみられるます。日本は自動車の電装部品での使用拡大による需要増加が期待されます。また、内燃自動車で燃料系チューブやエンジンルーム部品でも底堅い需要がみられます。また、台湾と韓国では電気電子分野の需要が大きく、近年は自動車分野でも伸びています。また、東南アジアではEV比率が高まっていることから、車載電装部品向けが伸長しています。
2.LCPコンパウンド(液晶ポリマー)

スマートフォンやPCなど電気電子分野のSMTコネクターでの需要が中心です。
一時期積み上がっていた在庫が解消されたことから、2024年以降市場は拡大を続けています。主要用途であるスマートフォンの生産台数は伸び悩んでいますが、折り畳みタイプなどの新型機種の開発やカメラの多眼化などに対応した新型SMTコネクターの需要は高まっています。また、データセンターの新増設に伴う冷却ファンでの使用増加や、サーバー向けコネクターでの使用増加により、市場は拡大しています。スマートフォンやデータセンター関連での需要増加、また、自動車分野ではxEV化に伴う電装化でコネクターやリレー向けなどの需要が安定していることから、2026年以降も市場拡大が続くと予想されます。
中国はスマートフォンおよびSMTコネクターの世界的な生産拠点であり、中国コネクターメーカーが技術力を高めていることもあり、高機能LCPの需要が高まっています。日本では高機能タイプのコネクターでLCPの使用が多く、コネクターメーカーからLCPメーカーへの新規グレード開発案件も継続的に発生しており、堅調な需要が続くとみられます。北米や欧州では自動車の電装化の進展により、アジア地域と比較して自動車分野の比率が高いです。
3.EMC(エポキシ樹脂成形コンパウンド)

封止材として半導体全般で使用されるため半導体市況に左右されますが、2025年はAIデータセンターでの関連の半導体需要の増加により、市場は伸びています。2026年以降は、データセンターに設置されるサーバーやクライアント端末、ロボティクスなどAIを搭載する製品の普及、省エネ推進に伴うパワー半導体の採用増加、次世代通信網整備に伴うデータトラフィック量増加への対応などで半導体の需要が増えるため、連動してEMC市場の拡大が予想されます。
中国には生産数の多いディスクリート半導体パッケージが多く使用されており、需要の5割以上を占めています。政府主導で半導体の内製化が進められていることもあり、今後も需要増加が予想されます。台湾や日本、韓国ではICパッケージ向けでの使用が多く、今後は先端パッケージ向けを中心に伸びるとみられます。また、米国でも半導体の内製化を進めており、後工程の重要性が高まっているため、長期的な需要増加が期待されます。 AI用半導体を中心に演算処理の高速化が加速しているため、パッケージや基板など周辺構成部材における熱対策が急務となっています。EMCでも充填材として熱伝導率の高いアルミナを配合することで、熱伝導率の高いグレードが展開されており、今後使用が増えるとみられます。
【参考】本記事で使用した「2026年 コンパウンド市場の展望とグローバルメーカー戦略 上巻」に掲載している調査対象市場
汎用樹脂
- PPコンパウンド
- PEコンパウンド
- PVCコンパウンド
- PSコンパウンド
- ABS
汎用エンプラ
- PCコンパウンド
- m-PPE
- POMコンパウンド
- PA6コンパウンド
- PA66コンパウンド
- PBTコンパウンド
- GF-PET
スーパーエンプラ
- PPSコンパウンド
- LCPコンパウンド
- PA6Tコンパウンド
- PA9Tコンパウンド
- PEEKコンパウンド
- PTFEコンパウンド
- 溶融フッ素樹脂コンパウンド
エラストマー
- TPV(架橋型オレフィン系エラストマー)
- 水添TPSコンパウンド(水添スチレン系エラストマーコンパウンド)
- TPVC(塩ビ系エラストマー)
- TPC(ポリエステル系エラストマー)
熱硬化性樹脂
- PMC(フェノール樹脂成形コンパウンド)
- EMC(エポキシ樹脂成形コンパウンド)
- SMC/BMC(不飽和ポリエステル樹脂成形コンパウンド)
◆本記事は「2026年 コンパウンド市場の展望とグローバルメーカー戦略 上巻」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。