株式会社富士キメラ総研は、企業を取り巻く環境の変化や様々なコスト上昇を背景に、業務効率化と生産性向上を目的に生成AI活用の進展などが続く、国内のDX関連投資状況について調査しました。その結果を「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 DX投資編」にまとめました。
この調査では、製造業、交通/運輸/物流業、金融業、小売/外食業、建設業、医療/介護、不動産、自治体、社会インフラ/情報通信/その他の9業種別にDX関連投資額を算出し、将来を展望したほか、各産業における注目サービス・ソリューション市場の動向をまとめました。
DXは、AIやIoT、クラウドコンピューティングといったデジタル技術を活用し、効率化や生産性を徹底して優位性を創出するオペレーショナル・エクセレンスを目指した業務変革や、ビジネスモデル変革、新規ビジネスの創出による売上拡大、顧客価値創出を目指す取り組みであり、それを実現するためにAIやIoT、ロボティクスなどを活用するICT投資(ユーザーの投資金額)をDX投資として捉えました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 DX投資編」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
国内の業種別DX関連投資額

業界によって、DX関連投資のスピード感に差はみられるものの、DX関連投資額は増加を続けており、対象とした業界の2026年度のDX関連投資額は7兆円を超えると予測されます。今後、DX関連投資は生成AI/AIエージェントの活用を前提とした展開となり、様々な分野で活発化することから、2030年度には10兆円を超えると予想されます。
特に投資額が大きいのは製造DXです。データドリブン経営(データ分析を基に経営判断や意識決定を行う)やESG経営(環境・社会・ガバナンスを重視し企業価値を高める経営)の実現に向けて、社内外の連携を含むデータ連携の需要が増えています。長期的にはフィジカルAIの実装を見据えた投資がけん引するとみられます。中でも、バリューチェーン連携に向けたデータ基盤統合のためのPLM(製品ライフサイクル管理)やBOM(部品表)、MES(製造実行システム)などの再構築が進められており、エンジニアリング系や生産系のデータ統合基盤に向けたデジタルスレッド/設計/開発DXの伸びが大きいです。また、ペーパーレス、省人化、高度化、属人化解消などへの取り組みとしてデジタル現場支援も伸びています。
交通/運輸/物流DXは、事故防止や乗務員不足などの課題に直結する投資が増えています。自動運転やコネクテッドサービスを含めたモビリティDXや、乗務員の業務効率化や安全性向上を目的にアルコールチェックやバース予約、運転中のドライバーの状態検知などを行う乗務員支援などが伸びるとみられます。物流拠点や配送の省人化に向けたロボット×AIへの投資も加速しています。
金融DXは、オープン化やクラウド移行などコストや拡張性・柔軟性を重視したシステム移行ニーズが高まり、業界横断で顧客接点強化や新たな価値創出を目指しているEmbedded Finance(非金融事業者がAPIを用いて自社サービスに金融サービスを組み込む)の導入が進展しています。また、仲介者を介さず個人同士の双方向データ利用・分散管理が可能な分散型ネットワーク技術であるWeb3(デジタル通貨、デジタル証券、暗号資産、NFTなど)への投資が活発化しています。
小売・外食DXは、接客やレジなどのフロント業務や、発注・棚卸などのバックヤード業務のオペレーションデジタル化への投資が進んでいます。また、従業員体験変革を目的に、深刻な人手不足に対応するため就業者のエンゲージメント向上や省人化への投資、外国人就業者や主婦の即戦力化を支援する取り組みへの投資が増加しています。
建設DXは、新3K(給与・休暇・希望)への対応を目指したデジタル技術の積極活用が投資を後押しし、国土交通省が主導する建設現場のオートメーション化の取り組み「i-Construction 2.0」の本格普及に伴いDX投資が一層進展するとみられます。遠隔臨場や配筋検査などの施工管理、監督・検査業務の自動化/省人化につながるITシステム、また、建設現場における作業員の状態管理(健康管理や危険予防)を目的にリモート/オフサイト現場管理が伸びています。
業界共通で現場DXを実現するソリューションとして、エンゲージメント向上ツールやマニュアル作成/現場教育ツール、現場帳票ペーパーレス化ソリューション、モバイルPOSシステム、クラウド型動画自動生成ツールなどは、業務省人化を進めながら属人化の解消を目的として、現場の業務負荷軽減や人材確保・育成、外国人の受け入れなど労働力強化に寄与することから、注目されています。また、戦略基盤やバックオフィスに関連したDXは、AIエージェントをソリューションに組み込みながら、大きく伸びるとみられます。戦略/基盤DXは、モダナイゼーションサービスやERP刷新の需要が大きく、バックオフィスDXは、大手企業から中堅、中小企業へとユーザーの裾野の広がりにより順調に伸びています。
◆注目個別市場サマリー
1.AIエージェント

ユーザーが与えた特定の目標に対し、タスクを自律的に分解・生成し、必要に応じて他のシステムと連携しながら、タスクを実行して目標達成を支援するシステムです。ここではAIエージェントを導入/運用するサービスやアプリケーション、プラットフォーム、インフラを対象としました。
実務に直結する生成AI活用を目指す企業が増えたことにより、2024年度頃から市場は急拡大しています。現時点では、導入検討やPoC(概念実証)段階の企業も多いため、適用業務の選定やロードマップ策定、AIエージェントを活用した業務フローの検討、また、PoC段階の開発・構築サービスが市場をけん引しています。 既存システムやアプリとの連携やセキュリティの観点から、Microsoft 365 CopilotやGemini Enterpriseなどのアドオン型アプリケーションの採用が先行しています。
今後は、AIエージェント活用がPoC段階から本格運用へ移行する企業が増えることから、大幅な市場拡大が続くとみられます。独立系ソフトウェアベンダー(ISV)やAIベンダーが提供する個別業務向けのプロダクト型や、内製化への関心が高まっているため、特にノーコードのAI開発プラットフォームの活用が進むとみられます。
2.クラウド型動画自動生成ツール

主にWebサイトや動画配信サイト、SNS向けの動画作成を支援するツールです。画像やテキスト、音声、動画などの素材を作成ツールに入れ、AIによる自動編集、また、フォーマットやテンプレートの活用によって、動画制作の効率化や自動化を実現します。
動画制作の内製化を実現するソリューションとして、大手企業の先進ユーザーを中心に導入が進んでいます。当初はWeb広告制作での活用が中心でしたが、DXの一環で多様な業務で動画活用が検討され、人事や教育、広報、営業などの案件に用途が広がったことから、市場は急成長を続けています。
このツールの知名度やユースケースの充実、AI活用ブームも相まって2024年度頃より市場の裾野が拡大しており、今後の成長要因になるとみられます。用途は多様化し、特に多くの企業で課題となっている従業員エンゲージメント向上を目的に採用や教育研修・マニュアル作成など人事案件の需要増加が予想されます。販促系も、セールスにつながる投資として社内理解が得られやすいため、人事系と並び需要をけん引する用途となります。また、既存ユーザーが全社的なDX推進を目的に利用部門、利用ユーザーを拡大するケースが増えることで、1社当たりの利用単価の上昇が市場成長要因です。また、生成AIによる動画生成の浸透は、動画活用の認知向上や理解促進につながるため、市場拡大の追い風になると予想されます。
【参考】本記事で使用した「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 DX投資編」に掲載している調査対象市場
DX市場
業界別
- 製造
- 建設
- 交通/運輸/物流
- 金融
- 小売/外食
- 不動産
- 医療/介護
- 自治体
- 社会インフラ/情報通信/その他
業界共通
- バックオフィス
- 顧客接点
- ワークプレイス
- 戦略/基盤
注目ソリューションDX市場
- DX人材アセスメントサービス
- AIエージェント
- GPUクラウド/ホスティング
- CIAM
- SaaS管理ツール
- SMS送信基盤
- 医療/介護向けシフト管理システム
- エンゲージメント向上ツール
- マニュアル作成/現場教育ツール
- モバイルPOSシステム
- ドローン点検
- 作業員安全ソリューション
- 現場帳票ペーパーレス化ソリューション
- クラウド型動画自動生成ツール
- GRESB対応ESG経営支援サービス
◆本記事は「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 DX投資編」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。