株式会社富士経済は、足元ではEVや電装分野で需要が伸び悩むことを受けて、各パワー半導体メーカーがAIサーバー向けの展開を積極的に進めるほか、次世代パワー半導体の本格採用の進展、業界再編の動きなどもあり、注目が集まるパワー半導体の世界市場を明らかにしました。その結果を「2026年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」にまとめました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2026年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.パワー半導体の世界市場

主要顧客であるエレクトロニクス機器メーカーなどの在庫調整が進んだほか、一部の民生機器や情報通信機器の需要が増えたため、シリコンパワー半導体が伸び、2025年の市場は拡大しました。中国パワー半導体メーカーは、現地の自動車メーカーやエレクトロニクス機器メーカーへの販売増加などにより好調な一方、EVの伸びが停滞したことにより欧米・日本パワー半導体メーカーが影響を受けました。
今後も規模の大きいシリコンパワー半導体は、使用される製品の伸びに合わせて市場は堅調に推移するとみられます。次世代パワー半導体では、SiCパワー半導体は価格競争の進行が懸念されるものの、それによりシリコンパワー半導体との価格差が縮小することで置き換えが進むため、大幅な伸びが予想されます。また、サーバーラック電源の高出力化に伴い、変換効率を上げるため、AIサーバーの電源機器向けで採用が増加しており、今後伸びが期待されます。加えて、酸化ガリウムパワー半導体は2027年頃から、ダイヤモンドパワー半導体は2030年頃から市場が本格化するとみられます。
2.パワー半導体の構成部材の世界市場

2025年は、パワー半導体需要の停滞を受け、市場の伸びは鈍化しました。シリコンウエハーは前年比微増、前工程材料は中国向けが堅調だった一方、欧米での需要が低迷しました。また、後工程材料も一部品目で伸びがみられましたが、自動車・電装分野向けが低調でした。
2026年以降は、パワー半導体需要の回復により、市場拡大が予想され、2029年頃には1兆円に達するとみられます。SiCウエハーに加え、GaN、酸化ガリウム、ダイヤモンドウエハーの実用本格化が進むことで市場拡大が期待されます。
3.パワー半導体の製造装置の世界市場

EVの低迷による自動車の設備投資減少、また、前年までの過剰投資の反動により、2025年の市場は大幅に縮小しました。前工程装置は欧米・日本パワー半導体メーカーで設備投資延期が相次ぎ、前年比18.7%減となりました。後工程装置や検査・試験装置も自動車・電装分野の需要低迷を受け、縮小しました。
2026年以降は、延期されていた設備投資の再開に伴って、前工程装置を中心に市場は回復へ向かうとみられます。特に、SiCパワー半導体の8インチライン向けの設備投資や、自動車・電装分野の検査・試験装置の設備投資、チップ外観検査装置などの採用増加を背景に、2035年に向けて市場は再び拡大するとみられます。
◆注目個別市場サマリー
1.SiCパワーモジュール【次世代パワー半導体】

SiCウエハーを使用したパワーモジュールを対象とします。
EVの走行性能や航続距離などを制御するトラクションインバーターでの需要が高いです。2025年はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)から置き換えが進んだことも市場拡大を後押ししました。
今後も、EVでの採用率は上昇し、2035年にはEV販売台数の70%程度になるとみられます。また、電鉄車両やエネルギー分野では、大容量ESSや太陽光発電パワーコンディショナーなどに採用されており、今後、市場は大幅な拡大が予想されます。一方、中国パワー半導体メーカーやエレクトロニクス機器メーカーなどの新規参入が進むことにより、価格競争の激化が懸念されます。
2.GaNパワー半導体【次世代パワー半導体】

GaN(窒化ガリウム)ウエハーを使用したパワー半導体を対象とします。電源がオンの際に抵抗が小さい低オン抵抗の特性を持ち、かつ高速スイッチングが可能であるため、電力ロスが少なく小型化が実現できます。ヒューマノイドロボットや電源機器など小型化が求められる製品で使用されています。
主に、スマートフォンのPD(Power Delivery)充電器に採用されており、SiCパワー半導体からの置き換えが進んだため、2025年は市場が拡大しました。
2035年にかけて、オンボードチャージャーや自動運転用のLiDAR、サーバーラック電源などでも採用が進むとみられます。また、小型化が可能なことから、急成長が期待されるヒューマノイドロボットやドローンなどでも需要増加が予想されるため、2035年の市場は2025年比5.4倍が予想されます。
3.酸化ガリウムパワー半導体【次世代パワー半導体】

酸化ガリウムウエハーを使用したパワー半導体を対象とします。高速整流用ダイオードであるSBD向けと高速スイッチング用トランジスタであるFET向けに分けられます。
日本メーカーを中心に開発が進められ、既にサンプルが出荷されています。2025年は日本メーカーによる4インチウエハーの製造技術の実証が完了し、SBD向けの量産に向けた動きがみられます。
2027年頃から、白物家電やサーバーラックの電源用などで、耐圧600VのSBD向けの量産が始まり、市場は本格化するとみられます。SiCパワー半導体よりも安価な点が魅力でしたが、SiCパワー半導体の価格下落によりコストメリットは薄れています。しかし、高電圧で使用可能などの利点により、量産化に伴う採用増加が期待されます。2030年頃には、SBDより需要が大きい産業分野やエネルギー分野など高耐圧機器で使用されるFETの量産も始まるとみられます。メガソーラーのパワーコンディショナーやメガワットチャージャーなどでの採用が期待されるほか、将来的には自動車や電装用でも採用が進み、2035年の市場は149億円が予測されます。
【参考】本記事で使用した「2026年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」に掲載している調査対象市場
パワー半導体
- 整流ダイオード
- SBD
- FRD
- サイリスタ・トライアック
- バイポーラパワートランジスタ
- 低耐圧パワーMOSFET
- 高耐圧パワーMOSFET
- IGBTディスクリート
- IGBTモジュール
- インテリジェントパワーモジュール
- SiC-FETディスクリート
- SiC-SBD
- ダイオード・サイリスタモジュール
- SiCパワーモジュール
- GaNパワー半導体
- 酸化ガリウムパワー半導体
- ダイヤモンドパワー半導体
パワー半導体構成部材
- シリコンウエハー
- SiCウエハー
- GaNウエハー
- 酸化ガリウムウエハー
- ダイヤモンドウエハー
- 窒化アルミニウムウエハー
- 二酸化ゲルマニウムウエハー
- 半導体レジスト
- バッファーコート膜
- CMPパッド
- CMPスラリー
- ダイボンディングペースト
- はんだ
- シンタリング接合材
- ボンディングワイヤ
- 封止材料
- 窒化アルミニウム回路基板
- アルミナ系回路基板
- 窒化ケイ素回路基板・白板
- 金属放熱基板
パワー半導体製造装置
- エピ膜成長装置
- グラインダ
- プラズマCVD
- コータ/デベロッパ
- 露光装置
- イオン注入装置
- 熱処理装置
- レーザーアニール装置
- ドライエッチング装置
- スパッタリング装置
- 洗浄装置
- ダイシング装置
- ダイボンダ
- 焼結装置
- ワイヤボンダ
- モールディング装置
- ウエハー外観検査装置
- チップ外観検査装置
- 電気テスタ装置
◆本記事は「2026年版 次世代パワーデバイス関連市場の現状と将来展望」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。