株式会社富士経済は、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を踏まえ、拡大方針が示された再生可能エネルギー関連の国内市場を調査しました。その結果を「再生可能エネルギー発電システム・サービス市場/参入企業実態調査 2025」にまとめました。
この調査では、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギー(再エネ)発電システム、関連機器・サービスに加え、再エネ電力利活用機器・サービスの市場を明らかにし、将来を展望しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「再生可能エネルギー発電システム・サービス市場/参入企業実態調査 2025」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.再生可能エネルギー発電システムの国内市場
2025年度の市場は2兆28億円が見込まれ、その約5割を太陽光発電システムが占めるとみられます。2040年度の市場は2024年度比66.6%増となる2兆9,070億円が予測されます。
太陽光発電システムは、kWベースのコスト低下が他のシステムより進んでいますが、長期的にはさらなる下落とそれに伴う普及が進み、2040年度には6割近くを占めるとみられます。
風力発電システムは、陸上風力から洋上風力への移行により導入コストが上昇することから拡大が予想されます。運転開始のプロジェクトが複数進行しているため2030年度に突発的に拡大します。以降も洋上風力がけん引し、2040年度には3割程度を占めるとみられます。
水力発電システムは、大型案件のリプレース・リパワリングが2020年代に一段落することで2030年代には案件が小規模化し縮小、バイオマス発電システムは輸入燃料を利用する大型FIT案件の減少により縮小が予想されます。また、地熱発電システムは市場に占める比率は低いですが、政策支援による導入が期待されます。
2.種類別動向
太陽光発電システム第7次エネルギー基本計画達成に向けて導入促進
住宅向けを中心とする発電容量10kW未満の太陽光発電システムは、電気料金削減を目的とした自家消費用途での導入が堅調であり、東京都をはじめとした自治体独自の太陽光発電パネル設置義務化条例などを契機とした、新築戸建住宅における搭載率の上昇と蓄電システムとのセット導入が今後も進むとみられます。
非住宅向けは大規模案件の低迷が続いていますが、政府が国や地方自治体の建築物への設置を進める方針を示しているほか、自家消費を念頭に置いた民需拡大に向けた動きも活発化しています。また、2030年代には卒FITに伴うリプレース・リパワリング需要の高まりが期待されます。
ペロブスカイト太陽電池の開発積極化や補助制度導入など新規需要の創出に向けた取り組みも進んでおり、第7次エネルギー基本計画達成に向けて導入促進が図られることで市場拡大が予想されます。
風力発電システム陸上風力は適地減少。コスト高も洋上風力がけん引し拡大
大型陸上風力では2020年度前後にFIT認定を受けた案件を中心に導入が進み、2025年4月には147MWのウィンドファームが運転を開始しました。洋上風力では、2025年度に福岡県北九州市沖、長崎県五島市沖で、2026年内に茨城県鹿島港内で運転を開始するプロジェクトがあります。
2030年度以降は、大型陸上風力ではウィンドファームの適地減少に加え、環境アセスメント段階でのプロジェクトの一部延期・中止も想定されることから、新規導入量が減少するとみられます。一方、洋上風力は、2030年度前後に運転開始のプロジェクトが複数進行しており、規模も数百MWと大規模化が予想されます。
洋上風力の導入拡大に向けた規制の見直しや、ガイドラインの作成が進められており、2030年度以降も年間1GW程度の促進区域指定と公募実施による後押しが続くとみられることから、長期的には洋上風力が市場をけん引すると予想されます。
水力発電システム大型案件のリプレースが落ち着き、案件の小規模化により縮小
旧一般電気事業者による大型リプレース案件により、2025年度以降複数の5MW以上の水力発電システムが運転開始の予定です。老朽化設備も多くリプレースを機に設備の最適化・高効率化が行われており、発電量の増加が予想されます。
2030年度までには1MW以上のFIT認定案件は導入が完了するとみられることや、2030年度までに規模の大きい5から30MW未満の案件がほぼ完了し、以降、水力発電機メーカーは開発の余地が残っている1から5MW未満のシステムに注力していくことで案件の小規模化が予想され、市場は縮小するとみられます。
バイオマス発電システム継続的なリプレース需要に期待も、大型FIT案件の減少で縮小
FIP制度のみで適用が認められるバイオマス発電の対象が、2027年度の新規認定分から50kW以上となることから、2025年度、2026年度はFIT制度による駆け込み需要が予想されます。規模が大きい一般木質・農作物残さ発電では、輸入材を利用する50から112MW規模の案件が市場をけん引しますが、コスト上昇により工事着工を先送りする事例が増えており、市場に不透明感がみられます。
長期的には、小規模なバイオガス発電機や木質バイオマスガス化発電設備は13から15年程度でリプレースされるため、継続的な需要が期待されます。また、一般木質・農作物残さ発電は輸入材利用などによる需要のピークは過ぎ、市場縮小が予想されますが、Non-FITによる売電事業を検討する事業者が増えつつあることから、既存石炭火力発電のバイオマス専焼/混焼への転換に向けた設備更新の活発化が期待されます。
地熱発電システム政策支援もあり大型案件が具現化。未開発エリアの開発促進も期待
JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)が主体となって、地下資源探索や出資、および債務保証などの支援を実施してきた効果により、2025年度、2026年度に運転開始を予定する案件がバイナリー発電、水蒸気発電ともに進んでいます。
「地熱フロンティアプロジェクト」が立ち上がり、JOGMECが対象地域で初期調査を実施することで、民間企業では困難だった未開発エリアの開発促進が期待されるほか、自然公園法や温泉法の規制緩和が進むことで、今後も大型案件が具体化していくとみられます。
2030年度以降は、水蒸気発電プラントでは、中長期的には年に1件程度(2から15MW/件)の導入が進むとみられ、バイナリー発電では、数百kw級の開発適地は年々見出しにくくなっていますが、大型案件は10年に1から2件程度のペースで開発が進むと予想されます。
3.第7次エネルギー基本計画の目標値と富士経済による予測の比較
第7次エネルギー基本計画における2040年度の日本全体の発電量は1.1から1.2兆kWhとされ、このうち再生可能エネルギーの発電量の目標は4から5割程度とみられます。一方、富士経済の予測では、2040年度の再生可能エネルギーによる発電量は4,888.5億kWhとみられ、下限値には近いですが、第7次エネルギー基本計画の目標値は達成すると予想されます。
種類別にみると、太陽光発電システムの発電量は、第7次エネルギー基本計画の下限値を下回るとみられます。電気料金の値上がり、環境価値へのニーズ上昇などを受けて導入が進みますが、人員不足に伴う施工能力の限界、適地減少と案件の小規模化、新設からリプレースへの需要の変化などが想定され、発電量の増加は一定にとどまるとみられます。
風力発電システムの発電量は、2040年度時点で上限値に近い水準になるとみられます。国ならびに業界が「第1次洋上風力産業ビジョン」の目標の下、導入案件の具体化を推進しています。現状では洋上風力発電システムのコスト高から普及拡大に不透明感がみられますが、設備稼働率が高いことから導入によって発電量の増加が期待されます。
水力発電システムは、既設導水路活用型となるリプレース・リパワリング需要が活発に立ち上がることが予想されます。しかし、新設ではなくリプレース・リパワリングが中心であることから、発電量の増加は増強分のみとなり、微増にとどまるとみられます。
バイオマス発電システムは、2030年度時点で第7次エネルギー基本計画の上限値に近い水準となると想定されます。しかし、FIT買取期間終了後に、大規模木質バイオマス発電設備が安定的に安価な燃料を調達できるか否かによって、バイオマス発電事業の継続ではなく、火力発電への転換や事業廃止などの可能性もあることから、2040年度時点の発電量の維持には、卒FIT後の事業継続への支援が必要になるとみられます。
地熱発電システムでは、掘削技術者の高齢化、掘削事業会社のキャパシティがボトルネックとなり 、大量導入が進まない状況が今後も続くとみられます。「地熱開発加速化パッケージ」などの支援策も実施されていますが、2040年度時点では目標値に対して、下限値の半分程度にとどまるとみられます。
【参考】本記事で使用した「再生可能エネルギー発電システム・サービス市場/参入企業実態調査 2025」に掲載している調査対象市場
<再エネ関連機器、サービス>
太陽光発電システム
- 関連機器
太陽光発電パネル
ペロブスカイト太陽電池
パワーコンディショナー
高圧/特別高圧送受変電設備
太陽光発電併設蓄電システム - 関連サービス
第三者所有モデル(PPA、リース)
太陽光発電遠隔監視サービス
日射量予測/太陽光発電量予測サービス
太陽光発電セカンダリーマーケット
風力発電システム
- 関連機器
小型風力発電機
大型陸上風力発電機
洋上風力発電機
風力発電併設蓄電システム - 関連サービス
風力発電量予測サービス
水力発電システム
- 関連機器
水力発電機
バイオマス発電システム
- 関連機器
バイオガス発電機
バイオマス直接燃焼ボイラ
地熱発電システム
- 関連機器
地熱発電システム
バイオマス直接燃焼ボイラ
<再エネ電力利活用機器・サービス>
- グリーン電力小売サービス
- 環境価値証書(非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジット)
- Power to Gas(グリーン水素)
- 再エネアグリゲーションサービス
- 系統用蓄電池
- 揚水発電
- 電気自動車
- HP給湯器、蓄熱式空調
◆本記事は「2025年版 高熱伝導放熱樹脂複合材の用途展開と将来展望」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。