株式会社富士キメラ総研は、堅調な需要増加が続くネットワークセキュリティビジネスの市場について、「ゼロトラスト」「DX」「人材不足/自動化」「サプライチェーン攻撃」「内部不正」「ユーザーSOC/CSIRT」「クラウドセキュリティ」などのトレンドに注目しながら調査を行いました。その結果を「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 市場編」 「同 ベンダー戦略編」にまとめました。
この調査では、市場編は、ネットワークに関わるセキュリティサービス21品目、セキュリティ製品32品目の市場について、現状を把握し、将来を予想しました。また、ベンダー戦略編は、セキュリティソリューションベンダー29社、セキュリティツールベンダー14社の分析を行いました。
※企業規模は、超大手(従業員数5,000名以上)、大手(従業員数1,000~4,999名)、中堅(従業員数300~999名)、中小(従業員299名以下)で区分しました。公共団体に関して、超大手は官公庁、大手は都道府県と東京23区、政令指定都市、中堅は人口10万人以上の都市、中小はその他市町村として区分しました
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 市場編」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.ネットワークセキュリティビジネスの国内市場
ゼロトラスト(社内外のネットワークすべてを信用しないことを前提にセキュリティレベルを向上させる概念)への対応を中心としたセキュリティへの投資が活況で、市場は堅調に拡大しています。近年はSASE(Secure Access Service Edge)運用支援サービスやSWG(統合型セキュアWebゲートウェイ)、IDaaS(Identity as a Service)などクラウド/Webアクセス分野のサービス・製品の伸びが特に大きいです。
ユーザー企業を規模別にみると、超大手、大手では、高度化するサイバー攻撃やサプライチェーン攻撃に対応するため、セキュリティサービス・製品の導入を積極的に進めています。一方、中堅、中小では人材やコスト面の問題から対策は遅れがちではありますが、投資額は堅調に伸びています。
セキュリティサービスでは、ゼロトラストやサプライチェーン攻撃、ユーザーSOC(Security Operation Center)/CSIRT(Computer Security Incident Response Team)などをキーワードとした導入が増えています。ゼロトラストに対応した認証セキュリティの強化ニーズや、DX推進に伴い利用が増えているWebアプリケーションのセキュリティを確保するサービスの需要が高まっています。また、サプライチェーン攻撃では超大手、大手だけでなく、中堅、中小を対象とするケースが急増しているため、対応サービスの導入は企業規模を問わず進んでいます。
セキュリティ製品を、市場規模(2022年度)ごとに100億円以上、40億円以上100億円未満、40億円未満の製品カテゴリーで分類すると、それぞれの特色がみられます。
市場規模が100億円以上では、ゼロトラストやDX、内部不正をキーワードとした製品が好調です。近年はゼロトラストへの対応で端末セキュリティを目的とした投資が特に増えています。また、テレワーク普及により、従業員の情報の持ち出しや漏洩、消失などに起因するセキュリティ事案が増加しているため、ログ監視などの内部不正対策の強化も進められています。特にSWGやEDR(Endpoint Detection and Response)などの伸びが大きいです。
市場規模が40億円から100億円未満では、ゼロトラストやDXのセキュリティに対応した製品の需要が大きいです。ゼロトラストセキュリティの構築には適切なID管理が必須であり、また、侵入を前提にネットワーク全体のセキュリティ性を確保する必要があるため、それらに対応した製品の導入が増えています。また、DX推進に伴いクラウドサービス利用に対応したデータ保護ニーズ、クラウドサービス周りのセキュリティ対策強化を目的とした製品が伸びています。特にIDaaSやNDR(Network Detection and Response)、特権ID管理ツールなどの伸びが大きいです。
市場規模が40億円未満では、DXやサプライチェーン攻撃、ユーザーSOC/CSIRT、クラウドセキュリティがキーワードとなっています。市場が立ち上がったばかりの製品が多く、今後の伸びが期待されます。特にDX推進を受けたWebサービスやクラウドサービスの利用増加に伴うユーザー環境の複雑化を背景に、ツール単体ではなく統合的なセキュリティ対策に対応した製品が好調です。ASM(攻撃対象領域管理)ツールやSBOM(ソフトウェア部品表)/OSS(Open Source Software)管理ツール、システム全体を関連付けて脅威を抽出するXDR(Extended Detection and Response)の伸びが大きいです。
2.企業規模別ネットワークセキュリティ投資動向
|
2022年度 |
2028年度予測 |
2022年度比 |
|
|
超大手(従業員数5,000名以上) |
2,651億円 |
4,055億円 |
153.0% |
|
大手(従業員数1,000~4,999名) |
2,090億円 |
3,313億円 |
158.5% |
|
中堅(従業員数300~999名) |
1,183億円 |
1,707億円 |
144.3% |
|
中小(従業員299名以下) |
627億円 |
830億円 |
132.4% |
超大手、大手は、セキュリティ対策の取り組みに積極的であるため、投資額は順調に拡大しています。サイバー攻撃の高度化や近年増えているセキュリティ事案による事業停止を防ぐため、今後も積極的な取り組みが想定され、2028年度の投資額は2022年度比50%以上の増加が予想されます。中堅、中小はセキュリティ対策への予算が限定されており、今後の投資額の伸びは超大手、大手を下回るとみられます。しかし、各業界で定められるセキュリティガイドラインへの準拠や、サプライチェーン攻撃を意識した取引先からのセキュリティ対策強化の要望に沿って対応が進むため、堅調な伸びが期待されます。
◆注目個別市場サマリー
1.セキュリティサービスの成長率トップ3(2028年度予測/2022年度)
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2028年度予測 |
2022年度比 |
|
|
SBOM/脆弱性管理 |
15億円 |
187.5% |
105億円 |
13.1倍 |
|
セキュリティスコアリング |
45億円 |
136.4% |
97億円 |
2.9倍 |
|
スレットインテリジェンス |
67億円 |
139.6% |
133億円 |
2.8倍 |
SBOM/脆弱性管理サービスは、SBOMを運用する管理ツール及びマネジメントサービスです。SBOMはソフトウェアを構成するコンポーネントやライセンス、依存関係などを一覧化したもので、ソフトウェアのサプライチェーンを可視化できるため、OSSのライセンスや脆弱性の管理、リスク管理などで利用されます。サプライチェーンを経由したサイバー攻撃被害が多発していることから需要が高まっています。2022年度に外資系ベンダーの参入増加などサービス利用環境が整備され、2023年度に入り本格的に導入の機運が高まっています。セキュリティ関連投資に積極的な超大手や大手を中心に2024年度以降は大きな伸びが期待されます。一方、効果的に運用するための知識/人材不足や、管理・運用の価値が十分に浸透していないなど、導入の広がりにはさまざまな課題もみられます。
セキュリティスコアリングサービスは、最新セキュリティパッチの適用などの観点から、企業のセキュリティ状況をスコアリングし、セキュリティの脆弱性を第三者評価するサービスです。自社やグループ会社、取引先などの情報セキュリティ対策状況を確認するために本サービスが利用されています。従来は自社やグループ会社のチェックを主目的とした導入が多かったですが、取引先経由のサイバー攻撃のリスクが増えているため、取引先のセキュリティ対策の把握を目的に導入するケースが増えており、市場は堅調に拡大しています。
スレットインテリジェンスサービスは、セキュリティ専門のアナリストやホワイトハッカーがサイバー攻撃に関する手法や攻撃者、攻撃対象などに関する情報を収集、分析、検証するサービスです。2022年度は、サイバー攻撃の多様化に際し対策を講じるために、このサービスを導入し具体的なセキュリティツールやサービスと連携させるケースが増加しました。2023年度は、超大手を中心にセキュリティ対策への感度が高まっていることにより伸びています。単価が高価なため、現状は超大手の導入が中心でありますが、機能を限定しコストを抑えて導入できるマネージドサービスの提供も展開されており、導入企業の裾野が広がりつつあります。
2.セキュリティ製品の成長率トップ3(2028年度予測/2022年度)
|
2023年度見込 |
2022年度比 |
2028年度予測 |
2022年度比 |
|
|
SWG |
280億円 |
147.4% |
710億円 |
3.7倍 |
|
EDR |
285億円 |
132.6% |
600億円 |
2.8倍 |
|
DaaS |
377億円 |
107.7% |
505億円 |
144.3% |
※市場規模100億円以上(2022年度)の製品を対象としました
SWGは、Webプロキシやアンチウイルス、Webアクセス高速化、コンテンツフィルタリング機能などをベースとする統合型セキュアWebゲートウェイを対象とします。Web会議サービスや勤怠管理システムなどテレワークの普及とともに拡大したICTソリューションの一つであり、テレワーク対応などによる導入が増え、市場は拡大しています。また、本格的なゼロトラスト対応を目的にエンドポイントの近くで高度なセキュリティ調査を実行するSSE(Security Service Edge)の取り組みが進んでおり、SWGとZTNA(Zero Trust Network Access)やIDaaSなどと併せて利用するケースが増えています。ユーザー企業は、超大手や大手が多いですが、クラウドサービス利用する中堅や中小でも導入が増えています。
EDRは、PCやサーバー、スマートフォンなどネットワークに接続されたエンドポイントのセキュリティ脅威の侵入後対策を目的に監視を行い、不審な挙動の検知および対処を行う製品です。サイバー攻撃の高度化やゼロトラストへの対応などにより需要は高まっており、今後も堅調な市場拡大が予想されます。超大手、大手への導入が堅調な一方、脅威の侵入後の検知・対策が必要となり運用が難しく、多くのユーザーは外部のMSS(セキュリティ監視・運用支援)を活用しており、ライセンス費用に加えて運用費が発生することから、セキュリティ予算が限られる中堅、中小への導入は進んでいません。しかし、サプライチェーン攻撃による事業停止などのケースが散見され、中堅、中小では取引先からセキュリティ強化を求められるケースが増えていることから、今後の導入増加が期待されます。
DaaS(Desktop as a Service)は、VDI(仮想デスクトップ)の内、パブリッククラウド上にベンダーが構築するサービスを対象とします。導入/運用が複雑でないため、ゼロトラストの取り組みの初期段階として導入されています。2022年度は、在宅と出社のハイブリッドな就業形態が本格化する中、ゼロトラストを踏まえたテレワーク環境の本格整備を進める企業が増加し、新規導入に加え既存ユーザーの利用拡張が進みました。2023年度は、Windows 10のサポート終了(2025年10月予定)を考慮して、従業員の利用端末の刷新を目的とした導入も進んでいます。中長期的には、働く環境に左右されない作業環境を整備し、DX推進につながるツールとして利用が進むとみられます。
【参考】本記事で使用した「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 市場編」に掲載している調査対象市場
「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 市場編」
セキュリティサービス
- ウイルス監視サービス
- 統合セキュリティ監視サービス
- 不正アクセス監視サービス
- メールセキュリティサービス
- SASE運用支援サービス
- DDoS攻撃対策サービス
- WAF運用管理サービス
- Webアプリケーション脆弱性検査サービス
- モバイルアプリ検査サービス
- 電子認証サービス
- EDR運用支援サービス
- サイバーセキュリティ演習サービス
- レッドチーム演習/ペネトレーションテストサービス
- セキュリティ教育・トレーニングサービス
- セキュリティ/BCPコンサルティングサービス
- セキュリティスコアリングサービス
- セキュリティ検査/監査サービス
- SIEM運用管理サービス
- インシデントレスポンスサービス
- スレットインテリジェンスサービス
- SBOM/脆弱性管理サービス
セキュリティ製品
- ウイルス対策ツール
- セキュリティ監視ツール
- 標的型攻撃対策ツール
- ファイアウォール/VPN/UTM関連製品
- 電子メールアーカイブツール
- メール暗号化/メール誤送信対策ツール
- メールフィルタリングツール
- CSPM/CWPP
- SWG
- CASB
- IDaaS
- DDoS攻撃対策ツール
- DaaS
- WAF
- Webフィルタリングツール
- Webアプリケーション脆弱性検査ツール
- シングルサインオン
- デバイス認証ツール
- 統合ID管理ツール
- 特権ID管理ツール
- 認証デバイス
- ワンタイムパスワード
- EDR
- 端末管理・セキュリティツール
- MDM・EMMツール
- プラットフォーム検査ツール
- ASMツール
- 統合ログ管理ツール(SIM/SIEM)
- NDR
- XDR
- 検疫ツール
- SBOM/OSS管理ツール
「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 ベンダー戦略編」
- セキュリティソリューションベンダー29社
- セキュリティツールベンダー14社
◆本記事は「2023 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 市場編」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。