株式会社富士経済は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、企業活動の脱炭素への取り組みや意欲が高まっており、需給調整や分散型電源の最適な運用などの活用に期待が集まるエネルギーマネジメントシステム(EMS)と、関連するシステム・機器、サービスの国内市場を調査しました。その結果を、「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022」にまとめました。
この調査では、EMS6品目と、関連するシステム・機器、サービスについて発電分野5品目、送配電分野12品目、小売分野5品目、O&M・その他分野7品目の市場を分析しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
EMS市場
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
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全体 |
696億円 |
101.3% |
879億円 |
127.9% |
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HEMS |
65億円 |
104.8% |
104億円 |
167.7% |
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FEMS |
22億円 |
100.0% |
30億円 |
136.4% |
※HEMSとFEMSは全体の内数です
2021年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響により設備投資が抑制されていますが、前年度比微増となるとみられます。中長期的には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再エネ・省エネニーズが増大し、需給調整ビジネスやマイクログリッドが立ち上がることで活用シーンが増えるため、2035年度には2020年度比27.9%増が予測されます。
HEMS(Home Energy Management System)は家庭内のエネルギーの見える化や、設備機器の制御などを行うシステムを対象とします。
HEMSは、ZEH推進による新築戸建住宅への太陽光発電システムや蓄電システムなどの設置増加に伴って、採用が増えています。2021年度の市場は、新型コロナ流行の影響により縮小した新築戸建住宅市場が回復に向かっていることから、前年度比4.8%増の65億円が見込まれます。
長期的には、仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)やDR(Demand Response)を通じて、需要家や一般送配電事業者、小売事業者、再生可能エネルギー発電業者などに、調整力やインバランス回避などの各種サービスを提供するERAB(Energy Resource Aggregation Business)の本格化に伴い、住宅におけるエネルギーのモニタリングや制御システムとしての需要が高まることや、家電製品などエネルギー用途以外の機器との接続によりホームIoTやスマート家電として新たな付加価値やサービスが期待されることから、2035年度に104億円が予測されます。
FEMS(Factory Energy Management System)は工場や研究所など、産業施設における生産設備のエネルギーの見える化や使用状況の分析を行うシステムを対象とします。エネルギー使用状況の報告義務である「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の対象となる第一種、第二種エネルギー管理指定事業所でのシステム更新案件が中心であり、市場は横ばいで推移しています。
2020年度は、新型コロナ流行の影響による企業の設備投資が抑制されたことから、自動車向けを中心に市場は縮小しました。2021年度は、設備投資の回復がみられることや中小規模施設のEMS需要を取り込んでいますが、市場は前年度程度にとどまると予想されます。
今後は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、エネルギー消費の多い産業施設において、生産効率化や再生可能エネルギーの分散型電源の高効率利用などを目的に需要が高まるとみられ、2035年度の市場は2020年度比36.4%増が予測されます。
◆注目個別市場サマリー
1.見える化ツール
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
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95億円 |
105.6% |
145億円 |
161.1% |
業務・産業施設で採用される電力計測機器やデータ収集機器を対象とします。
製造業においてエネルギー使用状況報告義務やエネルギー消費原単位削減義務といった省エネ法への対応を目的に、対象となる大規模施設での採用が進んでいます。分電盤の分岐回路や受配電設備の主旋回路、負荷設備単位での電力計測を行う目的で、EMSの構成機器として採用されているほか、生産設備や受配電設備などの状態監視のために導入が進んでいます。
2020年度は、新型コロナの影響による自動車関連などの業績悪化に伴う設備投資の先送りや、見える化ツールを扱うシステムベンダーの営業機会が減少したことから、市場は縮小しました。2021年度は、自動車関連が回復に向かっていることに加え、巣ごもり需要で好調な半導体関連や液晶関連の設備投資が積極的であることから、市場は前年度比5.6%増が見込まれます。また、クラウドサービスの増加による大規模データセンターでの需要が好調なほか、小売電気事業者が付加サービスとして需要家に提供しているデマンド監視システムの構成要素としての採用が進んでいます。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、特に製造業で脱炭素への取り組みや意欲が高まっており、今後は脱炭素への投資額増加を受け、EMSや生産効率化システムの構築案件が増えるため、市場拡大が予想されます。また、再生可能エネルギーを中心とした環境負荷の少ない電源の最適利用やゼロカーボンシティなどのエリア単位でのエネルギー最適化など新たな需要も予想されます。さらに、少子高齢化による労働力不足から、エネルギーデータの遠隔監視によるエネルギー管理、設備管理の省力化ニーズも高まり、2035年度には2020年度比61.1%増が予測されます。
2.ハイブリッドパワーコンディショナー
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
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144億円 |
106.7% |
240億円 |
177.8% |
太陽光発電(PV)システムと蓄電システム双方の電力変換をコントロールするパワーコンディショナー(PCS)を対象とします。
住宅向けの小型製品が市場の中心であり、PVシステムと蓄電システムをセットで導入する際に配線を簡素化できることやPV自家消費の際の直流・交流交換の電力ロスが軽減されることから、需要が高まり、市場拡大してきました。
2021年度は、卒FIT関連やZEHの推進、災害対策意識の向上により蓄電システムの導入が進み、前年度比6.7%増の144億円が見込まれます。
ハイブリッドPCSを搭載した蓄電システムを新たにラインアップに加える企業も増えているほか、今後は、新築住宅や既存住宅、卒FITユーザーによるPV自家消費が増加し、2035年度に向けて市場拡大が予想されます。
3.V2X(自動車用充放電器)
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
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30億円 |
142.9% |
465億円 |
22.1倍 |
EVやPHVなどの車載蓄電池から、建物や電力系統に対して電力供給を行うための自動車用充放電器を対象とします。
2018年度以降、大規模自然災害の発生に伴うBCP用や卒FITユーザーによるPV自家消費用として、各種補助金制度の整備などもあり、市場は拡大してきました。2021年度は、前年度から続く半導体不足の影響で自動車生産に影響が出ていますが、引き続きBCPや卒FIT向けの導入が進んでいるため市場は前年度比42.9%増の30億円が見込まれます。
新規参入を目指し製品開発を進めている事業者もみられ、製品投入が活発化することで市場は拡大が予想されます。長期的には、EVやPHVの普及やEVやPHVをリソースとしたVPPやDRなどでの活用も期待されるため、大幅な市場拡大が予想されます。
4.ガススマートメーター
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2021年度見込 |
2020年度比 |
2035年度予測 |
2020年度比 |
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313億円 |
92.3% |
560億円 |
165.2% |
通信機能を搭載し、遠隔検針への対応や遠隔監視機能を向上させた家庭向けガスメーターを対象とします。
2021年度は、LPガス用メーターの検定満了に伴う更新需要が落ち着いているため、市場縮小が予想されます。しかし、都市ガス用は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社を中心に採用が増加しているほか、2020年末に同3社がスマートメーターシステムの共同開発を発表していることから採用がさらに進むとみられ、他の都市ガス事業者での導入も進展すると予想されます。
長期的には、都市ガス用の需要増加とともに、LPガス用は、再び更新需要の獲得が進むとみられ、2035年度の市場は2020年度比65.2%増の560億円が予測されます。
【参考】本記事で使用した「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022」に掲載している調査対象市場
EMS市場
- HEMS(住宅向け)
- MEMS(マンション/集合住宅向け)
- BEMS(ビル/業務施設向け)
- REMS(店舗/商業施設向け)
- FEMS(産業施設向け)
- CEMS(マイクログリッド/コミュニティ向け)
EMS関連システム・機器、サービス市場
発電分野
- 太陽光発電遠隔監視システム
- 発電プラント監視・制御システム
- 分散型電源最適制御システム
- ハイブリッドパワーコンディショナ
- コージェネレーションシステム
送配電分野
- 直流給電システム
- 需給管理システム
- 電力スマートメーター
- 見える化ツール
- 分電盤
- キュービクル式高圧受電設備
- 絶縁監視装置
- マルチリレー
- 系統用・発電所併設蓄電システム
- ガス絶縁開閉装置(GIS)
- 配電用変圧器
- 配電盤・スイッチギヤ
小売分野
- 蓄電池制御システム
- 顧客情報管理システム(CIS)
- 高圧一括受電サービス
- 需要家用蓄電システム
- V2X(自動車用充放電器)
O&M・その他分野
- 設備監視システム(建物設備向け)
- 自動検針システム
- IoT通信サービス(キャリア/LPWA)
- ガススマートメーター
- 水道スマートメーター
- IoTゲートウェイ(エネルギー管理用途)
- ドローン(エネルギーインフラ監視用途)
◆本記事は「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2022」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。