株式会社キメラ総研は、世界各地・各国で商用化が始まった5G通信関連の世界市場を調査しました。その結果を「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」にまとめました。
この調査では、5G通信関連として、基地局3品目、エッジ機器(スマートフォンや自動車、監視カメラなど、ユーザー側終端製品)7品目、基地局用構成デバイス・材料9品目、RFデバイス・CPU7品目、無線通信デバイス3品目、放熱・ノイズ対策2品目、基板3品目、計34品目の市場を調査・分析するとともに、主要関連企業15社の事例分析を行いました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」の全体サマリー
1.基地局の世界市場
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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D- |
マクロ |
LTE向け |
1兆6,720億円 |
79.0% |
― |
― |
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5G通信向け |
8,300億円 |
― |
2兆9,100億円 |
― |
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スモール |
LTE向け |
990億円 |
56.6% |
― |
― |
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5G通信向け |
― |
― |
5,250億円 |
― |
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C-RAN |
2兆370億円 |
132.3% |
7兆9,180億円 |
5.1倍 |
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合 計 |
4兆6,380億円 |
121.1% |
11兆3,530億円 |
3.0倍 |
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2019年の基地局世界市場は、LTE向け投資が減少するものの、5G通信向けや5G通信を見据えた投資が始まったことにより、2018年比21.1%増の4兆6,380億円が見込まれます。今後5G通信向け投資は本格化し、2025年に市場は同3.0倍の11兆3,530億円が予測されます。
基地局にはRUセクター(複数の無線送受信装置「RHH」をまとめたユニット)とBBU(ベースバンド処理装置)などが一体化したD-RAN基地局と、RUセクターとBBUが分離しており光ファイバーで接続しているC-RAN基地局に分けられます。また、D-RAN基地局はカバーエリアが広いマクロセル基地局(出力10W以上、カバーエリア300m以上)、カバーエリアが比較的狭いスモールセル基地局(出力10W未満、カバーエリア300m未満)に分けられます。
D-RANマクロセル基地局市場は、新興国ではLTE向け投資が増加しているものの、先進国では一巡しているため縮小していましたが、5G通信向けの投資が始まったことから、2019年は拡大が見込まれます。5G通信サービスを展開する各キャリアはカバレッジの確保を志向するため、初期投資として設置局数は増加します。ただし、各キャリアともに投資効率や立ち上げのスピードを重要視することから、既設LTE基地局のBBUのソフトウェアをアップデートし、5G通信に対応するアンテナやRUセクターを追加することで5G通信共用基地局とするアドオン部分への投資が中心となります。一方で、日本や中国、韓国、米国など光ファイバーの敷設率が高い国や地域ではカバレッジ対策としてC-RAN基地局を設置するケースもあります。
D-RANスモールセル基地局市場は、LTE向け投資の一巡と5G通信対策、C-RAN基地局の光張り出し局(光ファイバーで接続されたRUセクター)との競合によって一時的に縮小するとみられます。LTEのカバレッジが遅れている国はマクロセル基地局の設置を継続し、確保できている国は5G通信への移行も視野に入れ、マクロセル基地局へのアドオン投資やC-RAN基地局への投資を優先するためです。また、需要が期待される屋内用途でもDAS(Distributed Antenna System)やレピーターなどの受信装置と競合しているためです。中長期的には、NSA(LTEをアンカーバンドにした5G通信基地局)でLTEと同程度のカバレッジが実現したのち、高トラフィック対策でC-RAN基地局の光張り出し局と競合しながら需要が増加していくと予想されます。5G通信の一つであるミリ波の普及なども追い風になるとみられます。
C-RAN基地局は、BBU収容場所を親局に光ファイバーを用いてRUセクターを張り出すことによって広範囲のエリアをカバーすることが可能となることから、通信キャリアにとっては設備投資コストが抑えられ、省スペース化にも寄与します。また、複数の子局を集中制御し、干渉を防ぐことで通信の安定性や品質を担保できるなど、ネットワーク効率化の観点から設置が増えています。特に、5G通信の初期投資としてカバーエリアの拡大を考えた場合、人口密集度が高くトラフィック量が多いエリアでは光張り出し局の増設によるネットワーク拡張ニーズが高まると予想されます。C-RAN基地局はLTE、5G通信とも収容できますが、将来的にはすべて5G通信化していくとみられます。ただし、過渡期はLTEと5G通信の混在仕様になります。中長期的には先行する中国などの投資が一段落すると市場はピークアウトしていくとみられます。
2.5G通信対応エッジ機器の世界市場
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2019年見込 |
比率※ |
2025年予測 |
比率※ |
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スマートフォン |
880万台 |
0.6% |
9億台 |
62.1% |
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スマートウォッチ |
― |
― |
2,000万台 |
17.7% |
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監視カメラ |
僅少 |
僅少 |
僅少 |
僅少 |
※各エッジ機器世界市場における構成比です
スマートフォンやCPE(Customer Premises Equipment)、監視カメラなどで5G通信対応が先行しています。また、2022年前後からスマートウォッチやスマートグラスなどの5G通信対応が始まると予想されます。
5G通信は6GHz以下の周波数帯を用いたSub6と24GHz以上の周波数帯を用いたミリ波に分けられますが、スマートフォンの5G通信対応はSub6を中心に進んでいます。スマートフォンメーカー各社は早期にフラッグシップからミドルレンジまでを5G通信対応にして普及させたいとしており、特に、中国スマートフォンメーカーが1,500~2,000RMB程度の価格帯で、他メーカーに先駆けて普及させたいと考えていることから、2020年は一時的に買い替えの促進が期待されます。一方、ミリ波は利用できる国が限定的であることなどから、対応機種は大きく増加しないとみられます。
スマートウォッチの5G通信対応は現在見られませんが、通信機能が付与されていく中で、2021年頃から対応機種が徐々に投入されるとみられ、2025年には2,000万台が予測されます。リアルタイム性を求められるアプリケーションなど、機能強化が期待されます。
5G通信対応の監視カメラは、現在中国の北京経済開発特区で、一部が稼働している程度です。現状では5G通信の必要性は低く、中長期的にも市場は僅少にとどまるとみられます。将来的にスマートシティ化が進み、セキュリティの向上などの観点からリアルタイムに多量の監視データを収集するなど、今と異なる用途が出てくれば市場形成の可能性はあります。
◆注目個別市場サマリー
1.基地局用アンテナ(基地局用構成デバイス・材料)
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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4,560億円 |
167.6% |
9,270億円 |
3.4倍 |
基地局で採用されるアンテナを対象としました。
市場はRUセクター数と相関します。D-RAN基地局ではBBUとRRHが同じRUセクターにあり、アンテナはRUセクター当たり1~3個搭載されますが、投資が進んでいるC-RAN基地局では、RUセクター数が増えることから、アンテナの出荷が増加し、市場が拡大すると予想されます。
2.RRH(基地局用構成デバイス・材料)
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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3,100億円 |
130.8% |
1兆1,190億円 |
4.7倍 |
エッジ機器、もしくはBBUから受け取った信号を変換、増幅する無線送受信装置を対象としました。D-RAN基地局などではBBU当たり1つのRUセクターが搭載され、RUセクター当たり3~5程度のRRHが接続されますが、BBU当たり10を超えるRUセクターを光張り出し局として集中制御するC-RAN基地局の登場により、RRHの需要が増加しています。また、5G通信の方針として3GPP(通信仕様標準化プロジェクト)は省スペース化や高効率化を求め、アンテナ一体型のRRHを推奨しており、アンテナ一体型の代表であるMassive MIMOアンテナの需要が5G通信対応の進展とともに増加するとみられます。Massive MIMOアンテナは、32個以上搭載される個々のアンテナ素子に対してRF素子としてRRHが一つずつ搭載されるため、今後市場は大幅に拡大すると予想されます。
3.基地局用CPU・FPGA(基地局用構成デバイス・材料)
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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2,553億円 |
3.2倍 |
1兆7,600億円 |
22.3倍 |
基地局向けで採用されるCPUやアクセラレーター用FPGAを対象としました。基地局向けCPUはBBUの構成部品の一つであり、A/Dコンバーターで変換されたデジタル信号をデジタル処理する機能を担っています。基地局ベンダーによってはFPGAを採用するケースもあります。
基地局向けCPUは、BBUの一部を構成する要素であることから、市場はBBUの動向と相関します。5G通信で帯域幅が広がるため、CPUに求められる処理能力は上がります。また、BBUごとの電源能力も限りがあるため、低消費電力化も求められています。一部基地局ベンダーでは、自社でCPUを内製しています。
C-RAN基地局への投資によって、集中型BBUに接続されるRUセクターの形式も多様になります。動的にネットワークの再構成を行うリコンフィグレーション性能が求められているため、FPGAの採用が進むとみられます。
4.モバイル機器用アンテナ(エッジ機器用デバイス)
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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3,600億円 |
102.0% |
9,850億円 |
2.8倍 |
携帯電話通信を行うために搭載されるアンテナを対象としました。BluetoothやWi-Fi、GPS、ワンセグなどのアンテナは対象外としました。
対応する周波数の増加により、スマートフォンを中心に搭載されるアンテナ数は増加しています。LTEの周波数帯は700MHzから2.5GHz程度まであり、比較的広帯域であることからアンテナ分割が望ましく、加えて、MIMOやキャリアアグリゲーションに対応することでさらにアンテナが必要となるためです。LTEのハイエンド端末では1台に7~8個のアンテナが搭載されているケースもあります。5G通信対応では、Sub6でアンテナの搭載係数は増加すると予想され、ミリ波では対応のアンテナが3~4個搭載されます。今後も市場は拡大が予想されます。
5.ベーパーチャンバー(エッジ機器用デバイス)
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2019年見込 |
2018年比 |
2025年予測 |
2018年比 |
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168億円 |
3.8倍 |
698億円 |
15.9倍 |
ここではスマートフォンやゲーミングPCなどで採用される厚み0.4mm未満の熱拡散デバイスを対象としました。
ベーパーチャンバーは、以前はゲーミングPCやゲーミングスマートフォン、業務用タブレットなど限定的な採用にとどまっていましたが、2019年にSamsung El. 「Galaxy S10」に採用されたことで本格的に市場が形成されました。大手中国スマートフォンメーカーの5G通信対応モデルでも採用が始まっています。5G通信対応モデルではアプリケーションプロセッサー(以下、AP)の発熱が問題になるため、Sub6対応モデルが大幅に増加する2020年から2021年に市場は急拡大すると予想されます。中国スマートフォンメーカーはミドルレンジまで5G通信対応を進めていますが、ミドルレンジはグラファイトシートなど既存技術での対応となり、採用はフラッグシップからハイエンドにとどまり、ハイエンドの需要は飽和状態、また、APの放熱特性の向上によりベーパーチャンバーが不要になる可能性もあることから、その後、市場の伸びは鈍化します。しかし、2022年以降はSub6以上に発熱が問題になるミリ波対応モデルの増加により、市場が拡大すると予想されます。
【参考】本記事で使用した「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」に掲載している調査対象市場
基地局
- マクロセル基地局
- スモールセル基地局
- C-RAN基地局
基地局用構成デバイス・材料
- 基地局用アンテナ
- RRH
- BBU
- 基地局用パワーアンプ
- 基地局用ローノイズアンプ
- 基地局用CPU・FPGA
- 高多層基板
- アンテナ用レドーム材料
- 高周波デバイス用ウェハ
エッジ機器専用デバイス
RFデバイス・CPU
- モバイル機器用アンテナ
- SAWデバイス・BAWデバイス・次世代フィルター
- モバイル機器用パワーアンプ
- モバイル機器用ローノイズアンプ
- モバイル機器用RFモジュール
- ベースバンドプロセッサー
- アプリケーションプロセッサー
無線通信デバイス
- Wi-Fiチップ
- LPWA
- 5G通信モジュール
放熱・ノイズ対策
- ベーパーチャンバー
- ノイズ抑制シート
基板
- ビルドアッププリント配線板
- LTCC基板
- フレキシブルプリント配線板
エッジ機器
- スマートフォン
- CPE
- 自動車
- ドローン
- 監視カメラ
- スマートグラス
- スマートウォッチ
企業事例分析
- 関連企業15社
◆本記事は「5G通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2020」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの必要な部分だけをご利用になりたい方は、こちらの市場調査データサービスでご確認いただけます。