株式会社富士経済は、点検作業員の不足、自治体予算の削減などインフラ維持管理に関する課題に対応するための手段として注目されている、次世代管理技術・システムの国内市場を調査し、その結果を「2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望」にまとめました。
この調査では、「道路」「鉄道」「空港・港湾」「治水」「生活インフラ」の5インフラ領域における、「画像処理・カメラ機器/システム」「センシング機器/システム」「ロボット機器/システム」「ドローン技術/システム」「現場支援ツール/システム」「データ管理・マネジメント支援システム」の6つの技術領域に着目し、維持管理の次世代技術・システム市場の現状を把握し、将来を予想しました。加えて、最新の動向を把握するために、次世代技術を活用した機器・システムやサービス100事例を取り上げています。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
「2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望」の全体サマリー
1.インフラ維持管理の次世代技術・システム関連市場
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2020 |
2019 |
2035 |
2019 |
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全体 |
400億円 |
115.6% |
2,773億円 |
8.0倍 |
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道路 |
205億円 |
122.0% |
1,869億円 |
11.1倍 |
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鉄道 |
80億円 |
105.3% |
280億円 |
3.7倍 |
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治水 |
9億円 |
128.6% |
85億円 |
12.1倍 |
※道路、鉄道、治水は全体の内数です
2019年度の市場は346億円となりました。国土交通省を中心にインフラ維持管理技術への開発支援が進められてきましたが、法制度の改正や点検要領の改訂に時間を要したことなどから、市場拡大は緩やかでした。しかし、2019年度に橋梁・トンネルの点検要領が改訂され、近接目視の支援・補完技術として新技術の導入が認められたことや、また、開発から実用化、事業化フェーズに入った技術・システムが増えていることなどから、市場が拡大する環境が整いつつあります。特に、ドローンでは総務省の補助金制度が2019年度に始まり、サービスへの参入が活発化しています。
2020年度はインフラ総点検、データ管理についてまとめた「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」の最終年度を迎えます。同計画の推進に伴って、開発補助事業などが実施され、画像処理やセンシング、ロボットなどの次世代インフラ維持管理技術の開発が促進されており、それらの技術が複合的に活用されることなども想定され、市場は堅調な拡大が見込まれます。
今後、インフラの老朽化や頻発する自然災害対策、点検作業員不足、法改正や点検要領の改訂、また、国土交通省主導によるインフラデータベース化や自治体に対する新技術導入支援制度の充実などが市場拡大を促すとみられます。特に、ドローンを含む画像処理、センシング技術を中心に、近接目視の支援・補完・代替技術として導入が加速し、2035年度の市場は2019年度比8.0倍の2,773億円に拡大すると予測されます。
AIを活用した劣化診断・予測などのシミュレーション技術が確立し、5Gや6Gの次世代通信技術を活用したリアルタイムなデータ更新や情報共有化が実現されるとともに、タブレット端末やウエアラブル機器の採用による維持管理業務のデジタル化が進むとみられます。特に注目される技術としては、動画やセンシングデータの情報を基に、AIを活用して劣化診断・評価を行うサービスの進展、画像やレーザー・レーダー計測による3Dモデル作成などです。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供する衛星SAR画像は、天候に左右されることなく上空画像を取得できるため注目されるなど、今後は機器やシステム、点検サービスだけでなく、情報サービスといった新しいビジネスモデルによる市場の活性化も期待されます。
インフラ領域別にみると、道路の市場規模が大きく、全体の約5割を占めています。2019年度に橋梁およびトンネルの点検要領が改訂され、また、2020年度に新技術を紹介する「点検技術支援性能カタログ(案)」(国土交通省)が公表されたことが、次世代技術・システムの導入を後押しすると期待されます。今後は、人手による路面性状調査の代替や補完で活用されるセンシングや画像処理・カメラを中心に大きく伸びるとみられ、2035年度の市場は2019年度比11.1倍の1,869億円が予測されます。
治水は、規模は小さいですが、近年頻発する水害の影響もあり、防災・減災対策も視野に入れたインフラ維持管理への注力度が高まっているため、大きな伸びが予想されます。現状はGIS(地理情報システム)の情報に新たな画像などのデータを組み込むデータ管理・マネジメント支援システムなどの需要が高いですが、今後は目視確認が難しい微細な変化を把握するための画像処理・カメラやセンシングを中心とした伸びが予想されます。
空港・港湾や鉄道、生活インフラも堅調な伸びが予想されます。空港・港湾や鉄道に関しては、運営主体が民間事業者であるため、自社利用の形で機器/システムを開発、活用を行っているケースが多いです。生活インフラでは、下水道法が改正されたことで下水道管路の点検需要が高まり、それらで使用されるロボットやセンシングが伸びるとみられます。また、太陽光発電システムや鉄塔点検などではドローンの活用が進むとみられます。
2.注目技術市場
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2020 |
2019 |
2035 |
2019 |
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センシング |
166億円 |
114.5% |
1,268億円 |
8.7倍 |
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画像処理 |
126億円 |
116.7% |
750億円 |
6.9倍 |
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ドローン |
18億円 |
163.6% |
265億円 |
24.1倍 |
技術領域別にみると、センシングの市場規模が大きく、今後も伸びが期待されます。各インフラの老朽化が進行する中で、維持管理点検の結果に伴って補修や修繕が求められますが、自治体の予算は限られており早急な対応が難しい場合もあります。そのため、センシング機器/システムで計測精度・範囲の拡充が進展し、補修・修繕までのモニタリングや防災・減災対策、劣化診断などで活用が進むとみられます。
画像処理・カメラも順調な伸びが予想されます。レーザー/レーダーや高精度カメラを搭載したMMS計測、ドライブレコーダーやカメラを車両に設置して計測データを解析するサービスが中心となっており、橋梁やトンネルの点検要領の改訂により長期的な需要増加が予想されます。
ドローンは今後大きく伸びるとみられ、2035年度の市場は2019年度比24.1倍が予測されます。2018年度以降、デンソーやソフトバンク、NTTグループなどの大手企業やスタートアップ企業によるドローンサービス事業への本格参入が相次いでおり、中でもインフラ維持管理点検は重点サービスの一つに置かれています。また、橋梁やトンネルでは点検要領改訂に伴った新技術として、目視要件でのドローン代替が認められたため、今後の市場拡大が期待されます。
ロボットや現場支援ツール/システム、データ管理・マネジメント支援システムも堅調な伸びが予想されます。各インフラの管理点検業務における作業員の業務効率化および新型コロナウイルス感染症対応として書類などの電子化が進み、伸びを後押しするとみられます。
◆注目個別市場サマリー
河川(堤防・護岸)
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2020年度見込 |
2019年度比 |
2035年度予測 |
2019年度比 |
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6億円 |
120.0% |
32億円 |
6.4倍 |
河川の堤防、護岸などのコンクリート構造物を対象とします。河川の維持管理については、国土交通省が「河川砂防技術基準維持管理編」を作成し指針を示しており、近年では洪水や浸水などの水害を防ぐ観点から、防災対策の重要性が高まっています。近年の頻繁な水害への防災対策とした堤防・護岸延長の推進や、国土交通省による河川防災ステーションの整備などが、維持管理を目的とした次世代技術・システムの導入を後押しするとみられます。
現状、河川の維持管理は自治体職員などの巡視が主軸です。インフラ構造物の変状確認などに加え、周辺環境の監視・確認パトロールとしての意味合いが強く、確認項目が多岐にわたっていることもあり、今後は、高リスクが想定される箇所については、画像処理・カメラやセンシングを導入し、デジタル技術と点検パトロールが増えるとみられます。
現状では、機器・システム販売型の比率が大きいですが、ロボットやドローンの採用増加とともに、点検ソリューションなどのサービス提供型の需要増加が予想されます。2035年度にはサービス提供型の市場は23億円が予測され、全体の70%以上を占めるとみられます。
【参考】本記事で使用した「2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望」に掲載している調査対象市場
インフラ分野別
道路関連
- 高速道路(舗装)
- 高速道路(橋梁)
- 高速道路(トンネル)
- 一般道路(舗装)
- 一般道路(橋梁)
- 一般道路(トンネル)
- 道路附属物(標識、照明)
- 法面
鉄道関連
- 鉄道(路線)
- 鉄道(橋梁)
- 鉄道(トンネル)
空港・港湾関連
- 空港(滑走路)
- 港湾(土木構造物)
- 海岸(堤防・護岸)
治水関連
- ダム構造物
- 河川(堤防・護岸)
- 砂防施設(堰堤・床固工)
生活インフラ関連
- 上水道管路
- 下水道管路
- 都市ガス管路
- 配電線・電柱
- 通信基盤設備(管路・とう道)
- 鉄塔
- 太陽光発電システム
- 風力発電システム
技術領域別
- 画像処理・カメラ機器/システム
- センシング機器/システム
- ロボット機器/システム
- ドローン技術/システム
- 現場支援ツール/システム
- データ管理・マネジメント支援システム
◆本記事は「2020年版 次世代インフラ維持管理技術・システム関連市場の現状と将来展望」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。