株式会社富士経済は、患者数の増加により糖尿病治療剤や糖尿病合併治療剤などの伸びが注目される生活習慣病領域など3領域の医療用医薬品の市場を調査し、その結果を「2020-2021 医療用医薬品データブック No.1」にまとめました。
この調査では、生活習慣病領域(7品目)のほか、腎性貧血治療剤や高カリウム血症・尿毒症治療剤などの腎疾患治療剤(8品目)、抗凝固剤・ヘパリン製剤をはじめとするその他循環器疾患治療剤(8品目)の市場を調査しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2020-2021 医療用医薬品データブック No.1」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
「2020-2021 医療用医薬品データブック No.1」の全体サマリー
生活習慣病領域、腎疾患治療剤、その他循環器疾患治療剤の国内市場
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2020年見込 |
2019年比 |
2028年予測 |
2019年比 |
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生活習慣病領域 |
1兆3,699億円 |
99.4% |
1兆3,106億円 |
95.1% |
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腎疾患治療剤 |
2,175億円 |
91.6% |
2,309億円 |
97.3% |
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その他循環器疾患治療剤 |
6,497億円 |
100.0% |
6,326億円 |
97.3% |
生活習慣病領域は患者数が多く、治療剤は長期にわたる服用が必要となるため、参入メーカーが多く、複数の薬剤が投入されていることから、1兆3,000億円を超える市場となっています。
2019年の市場は、糖尿病治療剤と痛風・高尿酸血症治療剤は伸びましたが、糖尿病合併症治療剤や高血圧症治療剤、脂質異常症治療剤はジェネリック医薬品の影響により縮小したため、2018年比0.7%減となりました。2020年は痛風・高尿酸血症治療剤も薬価の引き下げの影響で縮小し、2019年比0.6%減が見込まれます。
今後、高齢化の進行で患者数が増えるため、特に糖尿病合併症治療剤は大きく伸びるとみられます。また、非アルコール性脂肪性肝疾患治療剤は2024年頃に国内初の治療薬が発売され市場の立ち上がりが予想されます。一方、薬価の引き下げやジェネリック医薬品の影響により高血圧治療剤や脂質異常症治療剤、痛風・高尿酸血症治療剤などが縮小するため、2028年の市場は2019年比4.9%減が予測されます。
腎疾患治療剤の2019年の市場は、3割以上を占める腎性貧血治療剤が、上位製品のオーソライズドジェネリックのバイオシミラーの発売により苦戦しました。また、高リン血症治療剤や二次性副甲状腺機能障害治療剤などが薬価の引き下げやジェネリック医薬品発売の影響により売上が減少したため、縮小しました。2020年の市場は、腎性貧血治療剤の落ち込みや他薬剤のジェネリック医薬品の影響により、2019年比8.4%減が見込まれます。
2021年頃までに新薬の発売が予想され一時的に市場は回復に向かいますが、薬価の引き下げや特許切れに伴うジェネリック医薬品の発売などにより先発品は苦戦するとみられ、2028年の市場は2019年比2.7%減が予測されます。
その他循環器疾患治療剤は、2010年代前半までは抗血小板剤・末梢血管拡張剤の割合が大きかったですが、近年は抗凝固剤・ヘパリン製剤が直接経口抗凝固剤(DOAC)4剤の大型製品化にともない4割弱を占めています。2020年は、抗凝固剤・ヘパリン製剤と肺高血圧症治療剤は伸びますが、その他の薬剤は縮小するとみられます。
当面は、抗凝固剤・ヘパリン製剤は、DOACの適応拡大などにより需要は高まるとみられますが、主要製品の特許切れが想定されるため、2025年以降は縮小が予想されます。多くの薬剤が縮小するため、2028年の市場は2019年比2.7%減が予測されます。
市場環境は厳しいですが、心不全治療剤は、現在申請中の薬剤の発売が控えており、複数の開発品が2021年から2022年頃にかけて発売される可能性があり、以降の伸びが期待されます。また、肺高血圧症治療剤では慢性血栓塞栓性肺高血圧症や小児への適応拡大に向けた薬剤開発が進められています。
◆注目個別市場サマリー
1.糖尿病治療剤【生活習慣病領域】
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2020年見込 |
2019年比 |
2028年予測 |
2019年比 |
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5,692億円 |
103.3% |
5,918億円 |
107.4% |
生活習慣の欧米化や高齢化に伴い2型糖尿病の患者数が増えているため、市場は拡大しています。また、糖尿病治療期間の長期化に伴い、併用薬剤の増加やインスリン製剤へのシフトが進んでいることも、市場の拡大要因になっています。
剤形別では、経口剤が市場の70%以上を占めています。DPP-4阻害剤やSGLT2阻害剤などの新規作用機序製品、更に2017年、2018年にDPP-4阻害剤とSGLT2阻害剤の配合剤が発売され、基準となる薬剤が切り替わったことから、ジェネリック医薬品による影響が限定的となり伸びています。
注射剤では、GLP-1受容体作動薬の発売、インスリンアナログ製剤の新薬の登場など、薬剤の多様化により活性化しています。また、2019年、2020年にGLP-1受容体作動薬とインスリンアナログ製剤の配合剤が発売されたことから、今後の処方シフトが予想されます。
2型糖尿病の患者数は今後も大幅に増加し、また、治療の長期化が進むとみられ、併用される薬剤が追加されるケースが増えると想定されます。そのため、参入メーカーは配合剤の開発、発売を積極的に進めており、配合剤の伸びが予想されます。特にインスリンアナログ製剤とGLP-1受容体作動薬配合剤は自己注射剤の配合剤となることから、今まで併用していなかった患者への処方選択肢となるとみられます。
2024年までは市場は堅調に拡大しますが、2025年以降は大型品の特許が切れ、ジェネリック医薬品が普及することから、市場縮小が予想されます。
2.糖尿病合併症治療剤【生活習慣病領域】
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2020年見込 |
2019年比 |
2028年予測 |
2019年比 |
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117億円 |
97.5% |
481億円 |
4.0倍 |
糖尿病性神経障害治療剤、糖尿病性腎症やその他(糖尿病性皮膚潰瘍等)の治療剤を対象としました。
糖尿病患者数の増加に伴い合併症患者数は増えていますが、近年は新薬が発売されていないため、ジェネリック医薬品や薬価改定の影響により市場は縮小しています。また、糖尿病合併症治療は、糖尿病治療剤による血糖値のコントロールが原則であり、加えて、糖尿病合併症として直接適応を持たない薬剤が症状に合わせて処方されていることも市場拡大を妨げています。
2022年頃まで市場は縮小するとみられますが、糖尿病性腎症において新たな作用機序の薬剤や、注目度の高い適応拡大に向けた開発が進んでいます。糖尿病性神経障害治療剤でもフェーズⅢで適応拡大に向けた開発が進む治療剤があるなど、新製品の登場により、2023年以降は再び拡大が予想されます。また、糖尿病による心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)や心不全の抑制や治療に用いる治療剤が開発段階にあり、新たな薬剤が発売されることも市場拡大に寄与するとみられます。さらに、糖尿病領域や腎疾患領域に強いメーカーの積極的な参入も期待され、2028年の市場は481億円が予測されます。
3.心不全治療剤【その他循環器疾患治療剤】
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2020年見込 |
2019年比 |
2028年予測 |
2019年比 |
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958億円 |
98.2% |
1,323億円 |
135.6% |
心不全治療剤として、ジギタリス製剤、カテコラミン、PDEⅢ阻害剤、ANP製剤、その他心不全治療剤を対象とします。また、高血圧症治療剤で心不全の適応を持つ薬剤の心不全治療による売上も含めました。
上位品の多くが長期収載品であり、ジェネリック医薬品への切り替えにより2010年まで市場は縮小してきました。2010年12月に利尿剤「サムスカ」(大塚製薬)が「心不全における体液貯留改善」を適応として発売され、高い利尿効果が評価を得て売上を伸ばし、市場は拡大に転じました。
しかし、市場をけん引してきた「サムスカ」は2020年4月に薬価改定となり、また、2021年頃にはジェネリック医薬品が登場するとみられるため、それに伴い一時的に市場縮小が予想されます。一方、2021年には現在申請中の薬剤が発売される予定となっているほか、2021年から2022年頃にかけて複数の新薬が発売されるとみられ、2022年以降は市場拡大が予想されます。
【参考】本記事で使用した「2020-2021 医療用医薬品データブック No.1」に掲載している調査対象市場
生活習慣病領域
- 糖尿病治療剤
- 糖尿病合併症治療剤
- 非アルコール性脂肪性肝疾患治療剤
- 高血圧症治療剤
- 脂質異常症治療剤
- 痛風・高尿酸血症治療剤
- 肥満治療剤
腎疾患治療剤
- 腎性貧血治療剤
- 高カリウム血症・尿毒症治療剤
- 高リン血症治療剤
- 低リン血症治療剤
- 二次性副甲状腺機能障害治療剤
- 慢性腎不全治療剤(慢性腎臓病含む
- そう痒症治療剤
- 透析用剤
その他循環器疾患治療剤
- 抗凝固剤・ヘパリン製剤
- 抗血小板剤・末梢血管拡張剤(腰部脊柱管狭窄症を含む
- 心不全治療剤
- 不整脈治療剤
- 狭心症治療剤
- 肺高血圧症治療剤
- 利尿剤
- 脳卒中治療剤
◆本記事は「2020-2021 医療用医薬品データブック No.1」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。