株式会社富士経済は、温室効果ガスの排出量が少ない優れた再生可能エネルギーであり、開発適地の制約や開発リスク・コストの問題をクリアできる次世代型技術の進展により注目されている、地熱発電システムの市場を調査しました。 その結果を「次世代型地熱発電関連技術・市場の現状と将来展望」にまとめました。
この調査では、従来型地熱発電と次世代型地熱発電(超臨界地熱、CLGS[クローズドループ]、EGS[地熱増産システム])の各システムの市場について、現状を把握し、将来を予測しました。また、主要企業の参入状況や新規の取り組み、アライアンス動向、主要プロジェクトなどについて整理しました。
日本では、経済産業省が次世代型地熱発電技術の開発事業に対し、グリーンイノベーション基金を活用して2030年度までに総額1,102億円の費用を補助し、2030年代早期の実用化を目指すことを発表しています。また、世界的にはAI・データセンター事業者向けのクリーン電力需要の高まりを要因として、次世代型地熱発電向けの投資額が急拡大しており、日本の商社やエネルギー関連企業からの出資や提携も相次ぐなど、グローバルなエネルギー戦略の視点から注目が高まっています。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「次世代型地熱発電関連技術・市場の現状と将来展望」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆「次世代型地熱発電関連技術・市場の現状と将来展望」の全体サマリー
1.地熱発電システムの日本市場(年度ベース)

※市場は、単年の竣工ベース(商用化前の実証等を含む)のシステム施工費用で捉えました。
日本市場では、2025年度は従来型でMW規模の地熱発電システムが複数竣工しています。短中期的にも年間で数MWから数十MW規模の開発が継続するとみられ、長期的には既存の大規模地熱発電システムのリプレース需要も期待されます。
一方、次世代型は早くても2030年代後半以降の運転開始が見込まれますが、従来型の課題である開発リスク・コストの高さを解決できる技術として、長期的には地熱発電開発の主流技術として普及が期待されます。2040年代には商用ベースの次世代型地熱発電システムが複数竣工し、2050年度には次世代型で3,047億円の市場が予測されます。
従来型は、2025年度はフラッシュ式、バイナリー式での案件がそれぞれ竣工したほか、更新・リパワリング案件として「松川地熱発電所(15MW)」が運転開始しています。2026年度もフラッシュ式の案件に加えて、小規模なバイナリー発電所が複数、運転開始予定です。中長期的にもMW規模のバイナリー式の新設案件が年間数件、10MW超規模のフラッシュ式の新設案件が2~3年に1件程度のペースで開発が進むとみられます。2040年代以降は、運転開始から50年超となる20~50MW規模の大規模地熱発電所のリプレースも期待されます。
次世代型は、いずれの方式でも調査段階から竣工まで10年以上の開発期間が必要であり、運転開始は早くとも2030年代後半から2040年代になると予想されます。
最も事業化が有望視されるのはCLGS(クローズドループ)です。グリーンイノベーション基金の開発支援予算(国費負担上限額)の約6割がこの方式の開発にあてられ、長期的には数MW~数十MW規模の案件が年数件程度開発されるとみられるほか、蒸気・熱水発生量が減衰した既存地熱発電所への技術応用も期待されます。一方、米国で本命視されているEGS(地熱増産システム)は、日本の複雑な地層構造への応用や誘発地震の懸念から、普及拡大は現状では難しい見通しです。また、超臨界地熱は、超臨界状態の熱水の活用による発電規模の大規模化と発電コストの低下が期待されますが、大深度掘削技術の確立や超臨界状態の高温高圧熱水の回収技術、強酸性に耐える設備・計器等の材料開発など、実用化に向けた技術的ハードルの高さが課題となっています。
2.地熱発電システムの世界市場(年次ベース)

※市場は、単年の竣工ベース(商用化前の実証等を含む)のシステム施工費用で捉えました。
IEA(国際エネルギー機関)は、次世代型地熱発電について、2035年までに水力発電や原子力発電にも匹敵する、調整可能な低CO2排出電力の最も安価な供給源となる可能性があるとしており、2050年までには世界の電力供給量の最大8%を賄うことが可能としています。
従来型は、環太平洋火山地帯に該当するアジア太平洋や北米での展開が進んでおり、特に米国で大規模開発が数多く計画され、市場拡大が期待されます。コンパクトで高効率なバイナリー式が普及しており、新設ベースではバイナリー式がフラッシュ式を上回っています。
次世代型は、2026年に本格的な開発が進み、以降、市場拡大が続くと予想されます。
方式別では、CLGSは2023年よりドイツで実用化に向けた実証事業が進んでおり、2025年より一部運開しています。EGSは米国では実証段階を終えて、2026年の商用化に向けた具体的なプロジェクトが進んでいます。超臨界地熱は、アイスランドが2008年より掘削調査を進めており、米国やニュージーランドでも掘削調査に向けた研究・技術開発が進んでいます。CLGSやEGSは石油・天然ガス等の開発技術転用による技術革新が生じつつあり、事業性が大幅に向上しています。新設ベースでは、2030年代中頃には次世代型が従来型を上回り、地熱発電開発技術の主流として定着し、2050年には新規開発案件の大部分を占めるとみられます。
【参考】本記事で使用した「次世代型地熱発電関連技術・市場の現状と将来展望」に掲載している調査対象市場
地熱発電システム
次世代型技術
- 超臨界地熱
- CLGS[クローズドループ]
- EGS[地熱増産システム]
従来型技術
- 水蒸気発電(フラッシュ等)
- バイナリー発電
◆本記事は「次世代型地熱発電関連技術・市場の現状と将来展望」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。