株式会社富士キメラ総研は、生成AIの普及に伴い、関連サービスの開発や利用が広がる中で、それを支えるIT基盤として積極的な投資が進み、拡大・多様化している国内のデータセンター市場を調査しました。その結果を「データセンタービジネス市場調査総覧 2026年版 市場編」にまとめました。
この調査では、データセンターサービス11品目、データセンター関連製品25品目の市場を調査・分析し、将来を予想しました。また、この調査のシリーズで、データセンター事業者33社(SIer系事業者、キャリア系事業者、データセンター特化系(ファシリティ/サービス)事業者)の動向を整理した「ベンダー戦略編」では、Webによるユーザーアンケートも行いました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「データセンタービジネス市場調査総覧 2026年版 市場編」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.データセンターサービスの国内市場

データセンターサービス市場は、生成AIの急速な普及、企業のクラウド移行やDX化の進展を背景に確実に成長を続け、2026年には5兆円超、2030年には7兆円近い規模になると予測されます。これまではメガクラウドベンダーによるハイパースケールDC(データセンター)など大規模な投資が市場をけん引してきましたが、データセンターの形態も多様化し、数十から数百MWの大規模から数MWの小規模データセンター、コンテナ型データセンターなど様々な新設計画がみられます。
また、国は震災リスクへの備えや地域活性などの点からデータセンターの地方分散を推進しています。既存の電力と通信インフラを一体的に、効率よく活用しながら追加投資を行う「ワット・ビット連携」、新たなインフラ整備を行いGW級のデータセンター集積地を造成する「GX戦略地域」などの取り組みが注目されます。
ホスティング(基本)は、クラウドサービスの普及によって新規案件などは減少していましたが、生成AI需要の急増によるGPUサーバーの利用ニーズの高まりを受け、2025年は前年比二桁増が見込まれます。GPUサーバーの専有環境へのニーズが強く、クラウドサービス形態だけでなく、従来のホスティング形態での利用増につながっており、2020年代後半は前年比10%以上の成長が続くとみられます。ホスティング(アウトソーシング)は、国内有数の大手企業のITシステム向けを中心とした市場でしたが、現在は新規システムの構築をクラウドサービスで行うことが一般的となっているため、市場は減少しています。
IaaS/PaaSは、多くの新規システム開発でベースとなっており、既存のオンプレミスシステムからの移行も順調に進み、市場成長が続いています。さらに、生成AIサービスの広がりに伴いGPUクラウドサービスの利用が広がっており、生成AIの学習やファインチューニング(追加学習による微調整)で利用が進んでいます。現状、クラウド移行が可能なオンプレミス環境のシステムはいまだに多いうえ、GPUクラウドサービスの需要も引き続き増加することで市場拡大が続くと予想されます。
ハウジング(基本)は、クラウドサービスへの移行がマイナス要素であるものの、クラウドサービスでは対応できない生成AI学習用途システムや機密性の高いシステム、通信データ量増大に伴うネットワークラックの需要増加により拡大しています。また、SNSなどを展開する外資系Webコンテンツ会社が、利用者増に伴い国内データセンターに大規模な投資・調達を行っていることも拡大要因です。一方ハウジング(アウトソーシング)は、クラウドサービスでの新規システム構築が主流であるため微減が続いています。
通信回線サービスは、近年は新設データセンター数の増加に伴い、データセンター間の通信や、ユーザー拠点とデータセンターを結ぶ通信回線サービスの利用が増加しています。データセンターの稼働量に比例して利用が増えるため今後も市場拡大が続くと予想されます。特に生成AIの利用拡大と関連して、データセンターとユーザーの間でのデータ送受信や複数拠点に分散したGPUサーバー同士の接続、AIサービス利用時の通信需要などの増加が想定されます。
共同利用は、証券や銀行など金融業や公共団体向けの特定アプリケーションを、特定企業・団体が共同で利用するサービスを対象とします。銀行の統廃合などがマイナス要因ですが、証券では、証券企業のインフラコスト削減を目的とした共同利用サービスへの移行に加え、顧客分析、ユーザーの利便性向上などを目的にIT投資が拡大しており、市場をけん引するとみられます。
その他は、SaaS/DaaSなどのクラウドサービスが中心です。法改正やユーザー環境の多様化への対応や、セキュリティ対策として、システムの柔軟性が高いクラウドサービスの需要が高まっていることから、今後も拡大が予想されます。
2.地域別データセンターの総床面積

主要なデータセンター事業者やユーザー企業の拠点が多い関東が60%以上を占めています。今後も新設数が多い関東、関西を中心に伸びが続くとみられます。
関東は、印西や東京西部、川崎市、相模原市での開発が活発です。メガクラウドベンダー向けハイパースケールDCの開発が全国で最も進んでおり、東京都心部ではIX(インターネットエクスチェンジ)やクラウドサービスとの接続などを目的とした利用も進んでいるほか、外資系Webコンテンツ事業者向けの大規模ハウジングも拡大しています。
関西は、大阪府や京都府、奈良県、兵庫県が主要エリアです。関東と同様にメガクラウドベンダー向けのハイパースケールDCの利用が増加しています。2026年にはAI用の大規模データセンターの開発が計画されており、大幅な伸びが予想されます。
その他エリアは、GPUクラウド/ホスティングサービス用の拠点として各地でコンテナ型データセンターが開発されています。関東や関西と比較して小規模ですが、北海道や九州では数百MW規模のデータセンター開発が予定されており、クラウドベンダーの誘致やAIサービスの拠点としての利用が進むと予想されます。
3.ハウジングリテールサービス価格動向【事業者アンケート】

ハウジングリテールサービスは、サーバーラックの設置に必要な「ラック設置スペース」、ラック内のIT機器を稼働させる「電力」、バックアップ電源やIT機器の冷却のための「電気/空調各種設備」に加え、オプションサービス「ラックレンタル」を提供するサービスです。グラフは2025年と2026年のサービス価格について回答を得られた32事業者の集計です。
2025年は価格維持との回答が最も多かったです。近年の電気代高騰が落ち着いたことが要因とみられます。値上げ実施は13%であり、2024年の調査と比較して減少しました。その他には、電力料金に応じて定期的に価格を変更が含まれます。
2026年は、一転して値上げ実施が半数近い結果となりました。人件費や工事費、部材費などの高騰に伴い、データセンターの開発/維持コストが上昇しており、新設、既設を問わずサービス価格を見直す必要が生じています。20%強は未定と回答しており、その他に含んでいます。
◆注目個別市場サマリー
コンテナ型データセンター

輸送用コンテナを用いたデータセンターを対象とし、プレハブ工法で建設されるデータセンターは含みません。
積載するIT機器に応じたラックや空調設備、電気設備の増設が容易であるため拡張性が高いことや、ビル型と比較して建設期間が短いことが特徴であり、小規模に投資して徐々に拡張できることから注目されています。都心部などの主要開発エリアは電力確保や建設コストの課題がある中、電力供給に余力があれば短工期である点がメリットとなり北海道や九州など地方各地で開発が増えています。
市場は、生成AIサービスの稼働に向けたGPUサーバー設置が進んでいることや、新規参入事業者の増加で拡大しています。生成AIの活用ニーズに対してGPU環境が不足しており、今後もサーバー稼働環境の整備が必要になるため、市場拡大が続くとみられます。
懸念点として、データセンターを設計可能な事業者/技術者の不足が挙げられます。コンテナ型データセンターでは、各種設備のハードウェアとIT技術に関するソフトウェア関連の総合的なIT知識が求められるため、対応可能な技術者が限られており、近年の参入企業は、市場の黎明期から事業を継続している企業の技術支援を受けている場合が多いです。
【参考】本記事で使用した「データセンタービジネス市場調査総覧 2026年版 市場編」に掲載している調査対象市場
データセンターサービス
- ホスティング(基本/アウトソーシング)
- IaaS/PaaS
- ハウジング(基本/アウトソーシング/DinD)
- 通信回線サービス(エンド向け/DinD)
- 共同利用
- GPUクラウド/ホスティング
- その他(SaaS、他)
データセンター関連製品
ITプロダクト
- サーバー
- GPUサーバー
- ストレージ
- ルーター/スイッチ
- WDM/メディアコンバーター
- サーバーラック
空調設備
- パッケージエアコン
- ターボ冷凍機
- チラー
- AHU
- 冷却塔
- リアドア型/InRow型空調機
- CDU
- 中央監視システム
電気設備
- 無停電電源装置
- PDU/PDP
- インテリジェントPDU
- バスダクト
- DCIM
- 非常用発電機(ディーゼル/ガスタービン)
- 受電/変電設備
その他
- 二重床
- 超高感度煙監視システム
- ビル型データセンター
- コンテナ型データセンター
◆本記事は「データセンタービジネス市場調査総覧 2026年版 市場編」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。