株式会社富士経済は、世界的に実施・計画されているエンジン搭載車の販売規制などを背景にxEV需要の増加が予想されるなか、アジアや欧米など、各国・地域で積極的な投資や生産拡大が進む車載電池の世界市場を調査しました。その結果を「xEV・車載電池・電池構成部材市場の現状と将来展望 2026」にまとめました。
この調査では、エリア別、種類別、メーカー別にxEVを含む自動車、車載電池、車載電池構成部材の市場を把握し、将来を展望しました。車載液系LiB(液系リチウムイオン二次電池)、車載液系LiB用構成部材についてはコスト分析なども行いました。また、各国の政策動向についても整理しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「xEV・車載電池・電池構成部材市場の現状と将来展望 2026」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
xEV向け駆動用電池の世界市場
2024年の液系LiB市場は、中国のPHV、EV市場の伸長を背景に拡大しました。日本、欧州、ASEAN・東アジアではEV向けが停滞しましたが、北米、インド、その他国・地域では増加しました。中国では、電池搭載容量が大きいSUV型EVの需要が増加したこと、PHVにおいてEREV(PHVに分類される、発電用の小型エンジンを搭載したEV)化が進展したことなどが寄与しました。今後市場は、短期的には関税政策の影響が拡大阻害要因になるとみられます。中長期的には北米や欧州などの自動車生産地における液系LiB生産拠点拡張の進展が市場拡大に寄与すると予想されます。
NiMH(ニッケル水素電池)市場は、2023年以降、世界的なHV需要の増加に伴い拡大しています。LiBより低密度ではありますが、安価であり、需要が継続しています。特に、低温時の放電性能が高いことから、寒冷地仕様の4WD系HVを中心に底堅いです。市場は、日本や欧州、中国などで生産されるHVでの液系LiBの採用増加に伴い、2030年以降縮小に転じると予想されます。特に、小型車などでは、エネルギー密度で優位な液系LiBの採用が増えるとみられます。一方、北米など中大型HV生産が中心のエリアでは2030年以降も一定の需要が期待されます。また、コスト優位性や耐熱性能などの観点から、新興国などでも継続的な需要が予想されます。
SiB(ナトリウムイオン電池)は、エネルギー密度が低いため、駆動用としては2025年時点では小型EVやPHVへの搭載がみられます。液系LiBと比較して低温での作動能力や急速充電能力に優れています。SiBと液系LiBの混合電池パックが開発されていることから、今後は高級車や寒冷地帯などへの展開のほか、急速充電ニーズに対応した展開が開始されるとみられます。
固体電池では、半固体LiB搭載車が2023年に中国で発売されて以降、複数車種に搭載されています。欧州では、高分子系全固体LiBがEVバスなどに搭載されています。全固体LiBは、自動車メーカーやLiBメーカーによる開発が中心です。量産開始およびEVへの本格的な搭載は2027年前後とみられます。液系LiBに比べ生産コストは高くなると想定されていることから、今後は小型EVで搭載容量を抑制した搭載や、価格受容性の高い高級EVへの搭載により市場形成が進むと予想されます。
◆注目個別市場サマリー
1.駆動用液系LiBのメーカーシェア(新車搭載容量ベース)
メーカーシェアをメーカーの本社所在地によって国別に集計しました。2024年のxEV向け駆動用液系LiB市場における中国系メーカーのシェアは、前年から4.0ポイント増加しました。一方、韓国系は2.5ポイント、日系は2.0ポイント減少しました。2025年も韓国系、日系メーカーは主要顧客である北米市場での需要停滞を受けるなど、さらにシェアを落とすとみられます。
中国系メーカーは低コスト性に加え、近年は技術面でも日韓メーカーに先行する領域があり、従来に比べ信頼性も向上しています。一方、安全保障上のリスクから中国系メーカーからの調達を不安視する自動車メーカーの方針もあり、各国政府による原産地規則強化に向けた政策も進展しています。これにより、中長期的には日韓メーカーや欧米を中心としたメーカーによるシェア拡大も予想されます。特に、複数の大手自動車メーカーが本社を置く日本、米国、ドイツやその周辺国は、既存・新規の液系LiBメーカーの事業拡大が想定されます。
2.駆動用液系LiB正極活物質のメーカーシェア(新車搭載容量ベース)
メーカーシェアをメーカーの本社所在地によって国別に集計しました。正極活物質は液系LiB以上に中国系メーカーのシェアが高くなっています。特に、LFP(リン酸鉄リチウム)系正極活物質については、中国系メーカーの価格競争力や技術優位性が高いです。
中国系メーカーがLFP系で先行できたのは、LiFePO4+C Licensingが保有する主要なLFPの基本特許を、中国国内での製造・販売にはライセンス料を支払わずに利用できたためです。2022年には主要な基本特許権存続期間が満了したことで、中国国外での製造・販売も解禁され、中国系メーカーのシェア拡大に拍車をかけています。マンガンリッチ系正極活物質などの対抗馬の開発も進められていますが、当面はLFP系が主流になるとみられことから、中国系メーカーは高いシェアを維持すると予想されます。
3.LiB生産能力と駆動用液系LiB生産量
※1:生産能力は主要メーカーの生産能力合計。2030年以降は、同一の値を採用。車載向け以外、固体電池を含む可能性あり。※2:生産量は需要量(新車搭載容量ベース)
2024年時点の液系LiB生産能力は、3,568.6GWh、対する生産量は899.4GWhであり、需要を大きく上回る生産能力が確保されています。2040年には、生産量は3,539.9GWhが予測されますが、生産能力を2030年と同一とした場合でも稼働率は32%(生産量/生産能力)と、生産能力過剰になるとみられます。
4.EV向け駆動用液系LiBコスト(パックコスト)の分析
パックコストにおけるセルコスト比率は、セル積載効率の改善やセルサイズの大型化に伴う部品点数の削減などによって70%を超えています。今後もセルコスト比率は微増推移が想定される一方、三元系に比べ体積エネルギー密度が低いLFP系の採用比率上昇が進むため、市場平均のセルコスト比率としてはほぼ横ばいが予想されます。
セルコストにおける液系LiBの材料コスト比率は、2024年で53.4%と過半を超えています。今後、セル製造工程における高効率製造装置の採用に伴う組立コストの低下、人件費や地代の低いエリアでの生産拡大などが予想されることから、相対的に材料コスト比率が上昇するとみられます。
【参考】本記事で使用した「xEV・車載電池・電池構成部材市場の現状と将来展望 2026」に掲載している調査対象市場
自動車
xEV
- MHEV(マイルドハイブリッド自動車)
- HV(ハイブリッド自動車)
- PHV(プラグインハイブリッド自動車)
- EV(電気自動車)
- FCV(燃料電池自動車)
- xEVトラック
- xEVバス
その他
- ICEV/ISSV
車載電池
駆動用
- 液系LiB(液系リチウムイオン二次電池)
- NiMH(ニッケル水素電池)
- SiB(ナトリウムイオン電池)
- 固体電池(半固体LiB・全固体LiB)
始動用・補機用
- 液系LiB(液系リチウムイオン二次電池)
- 鉛電池
- EDLC(電気二重層キャパシタ)
- LiC(リチウムイオンキャパシタ)
車載電池構成部材
駆動用液系LiB向け
- 正極活物質
- 負極活物質
- 電解液
- セパレータ
- 正極集電体
- 負極集電体
- 正極バインダ
- 負極バインダ
- 導電助剤
- セル筐体
モジュール・パック構成部材
- バスバー材料
- バッテリーケース
- セル固定部材(エンドプレート・サイドプレート)
◆本記事は「xEV・車載電池・電池構成部材市場の現状と将来展望 2026」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。