株式会社富士キメラ総研は、関税問題やインフレ、人件費高騰といった世界的な情勢変化や、少子高齢化・生産年齢人口減少などの国内課題に直面し、各産業で重要度が増すIT投資の動向を調査しました。その結果を「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 IT投資編」にまとめました。
この調査では、製造業、建設業、交通/運輸/物流業、金融業、小売/卸売業、不動産業、文教/官公庁/地方自治体、サービス業、その他の9業種別にIT投資額を算出したほか、各産業における注目サービス・ソリューション市場の動向をまとめました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 IT投資編」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
国内の業種別IT投資額
人件費や原材料費の高騰、少子高齢化・生産年齢人口の減少といった諸問題に対応するべく、企業においてIT投資の重要性は高まっており、投資規模は拡大を続けています。近年のトレンドはレガシーシステムの刷新であり、各システムでのモダナイゼーション/マイグレーションが成長の大きな要因となっています。
各産業において慢性的な人手不足、属人化や技能継承といった問題は深刻であり、生成AIやAIエージェント、フィジカルAI・ヒューマノイドロボットなどの活用に向けた投資も大きく拡大していくと予想されます。
製造業は、最も投資規模が大きく全体の約3割を占めています。DX化のトレンドが積極的なIT投資に繋がっており、2030年度に向けてIT投資をけん引すると予想されます。現状、独自性や属人性の強いシステムの継承が課題となっており、個人に依存しない柔軟性の高いシステムへ刷新すべく各業務でIT投資が活発です。またレガシーシステムが多く残存しているため、今後もシステム刷新やモダナイゼーションの流れが継続し投資が拡大するとみられます。新規の投資としては、生成AIやAIエージェントの台頭によってロボットの活用が増え、フィジカルAIへの投資が急速に拡大するとみられます。
金融業は、業界全体の好調によりIT投資が活発です。業務システムや営業・マーケティング、セキュリティ領域を中心にIT投資が進められ、銀行でのコンサルティングサービスや証券/保険業における取り扱いサービスの増加など多様化が進むに従って、より安定性や信頼性の高いシステムを構築するためにモダナイゼーションが活発に行われています。今後は現在刷新が進められている基幹系システムが本格稼働し、運用や周辺システムの開発へ広がることで継続的な投資が予想されます。
小売/卸売業では、慢性的な人手不足解消に向けた投資が継続的に行われ、利幅の少なさから人件費削減や業務効率化といった、コスト削減目的の投資が優先される傾向にあります。近年はECを中心としたマルチチャネル化の進展で営業・マーティング関連の投資も活発です。今後も省人化・自動化への継続的な投資が予想されます。また、代替が難しかった接客業務でもロボットやアバターの活用に向けた投資が進展するとみられます。
建設業ではアナログ業務が多く残っていますが、政府主導によるデジタル化推進などにより、業種全体でデジタル化が進みつつあります。将来的には、労働人口減少を背景に、デジタルを活用した技術継承や建機の遠隔・自動操縦などへの投資拡大も期待されます。
交通/運輸/物流業は、法改正などの規制対応や顧客満足度向上に向けた投資が拡大しています。今後は、人件費削減に向けたAIやロボットの活用促進とともに管理システムの導入も増加していくとみられます。また、将来的な輸送力不足に対して次世代交通や共同輸配送の実現に向けた投資拡大が期待されます。
不動産業は、商習慣として非ITの業務フローが根強いですが、近年ではデジタル化の機運が高まっており、賃貸業務における管理システムなどからIT投資が進んでいます。中長期的には売買業務への投資や不動産DX実現に向けたソリューションへの投資に繋がっていくとみられます。
サービス業は業務効率化や人件費と比較したコストメリットからIT投資が進み、宿泊業ではPMSやセルフチェックイン、外食業ではモバイルオーダーシステムや予約管理システムが伸びています。
企業規模別IT投資動向
資金面やリソース面で体力のある大手企業の投資規模が最も大きいですが、中堅や中小においても、IT投資の必要性は増しています。大手企業がスクラッチで構築したシステムをベースとしたパッケージやSaaSを、ITベンダーが開発・展開することで中堅・中小企業にも普及が広がり高い成長率になると予想されます。
中小企業では、IT要員のみならず、戦略策定やIT利用を推進するマネジメント層の人材不足や、システムの導入・運用において考慮するポイントの多様化・複雑化がIT投資を進める上で課題となっています。このため、戦略策定に始まり、日常の運用やセキュリティ対策支援など、一連の業務を包括的に支援するアウトソーシング(マネージドサービス)の提供が求められ、業務プロセスを含めたアウトソーシングとしてBPaaS(Business Process as a Service)の需要も高まるとみられます。
◆注目個別市場サマリー
1.トラック受付サービス[交通/運輸/物流業]
工場や倉庫内で荷物の積み下ろしを行うための停留所であるバースの予約、受付を行うシステムを対象とします。荷待ち時間を削減し、物流コストの削減やドライバーの労働環境改善に繋がるほか、周辺道路の混雑や路上駐車といった問題への対応策としても注目されています。
2025年4月の法改正で、全てのトラックで荷役時間の記録が義務化され、荷役時間削減に向けた動きが活性化したことを受け、効率的なバース管理を目的に導入が進んでいます。2025年度は法改正の影響がより顕著になることや、人件費高騰の影響で事務員のコスト削減ニーズが高まっていることから、市場は二桁増が見込まれます。
今後、物流現場における人手不足はより深刻化し、さらに導入が進むとみられます。中長期的にはWMS(倉庫管理システム)や車両運行管理システムとの連携や、生成AIおよびロボット技術の活用が進み、庫内業務の効率化、自動化に向けた動きが活発になることで、市場は堅調に推移すると予想されます。
2.外食業向け予約管理システム[サービス業]
訪問客の予約情報を電子化し、予約業務の効率化を目的とする外食業向けシステムです。複数のグルメサイトやSNSと連携可能な有償製品を対象とし、特定のグルメサイト向けに無償で提供されるものは対象外です。
市場は、店舗における予約管理業務の効率化需要の高まりから拡大し、コロナ禍以降の外食需要の回復を受けて好調です。外食店では予約手法の多様化による管理業務の複雑化に対応するため需要が増加し、インバウンド需要の高まりも市場を大きく後押ししています。
都市部を中心に何らかの予約システムを既に導入している店舗が多いですが、各ベンダーではより付加価値を向上させた製品の提供により、新規獲得やアップセルが図られています。また地方部ではシステムが未導入の店舗も多く拡大余地も残されています。
外食業界の業務効率化ニーズは非常に高いため、中長期的に市場が拡大するとみられます。また、予約の一括管理に留まらず、データを基にしたマーケティング支援や顧客管理機能の強化によって単価が上昇し、市場を押し上げると予想されます。
【参考】本記事で使用した「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 IT投資編」に掲載している調査対象市場
業種
- 製造業
- 建設業
- 交通/運輸/物流業
- 金融業
- 小売/卸売業
- 不動産業
- 文教/官公庁/地方自治体
- サービス業
- その他
業種別デジタルソリューション
製造業
- 生産管理システム(大中規模/小規模)
- SCM/S&OP
- PLM/PDM
- 電気系CAD/CAM
- 機械系CAD/CAM
- AI図面検索システム
- CAE
- MES
- SCADA
- 製造業向けデータプラットフォーム
建設業
- 統合工事管理システム/原価管理システム
- 施工管理システム
- BIM/CIM
- 土木積算システム
- グリーンファイル作成ツール
交通/運輸/物流業
- 配車計画支援システム
- 車両運行管理システム(デジタコ型)
- 車両運行管理システム(非デジタコ型)
- デジタル点呼/アルコールチェック管理システム
- トラック受付サービス
- WMS
金融業
- 勘定系システム
- 営業店システム
小売/卸売業
- 量販店/スーパーマーケット向け基幹系システム
- 専門店向け基幹系システム
- 食品ロス削減ソリューション
- 本部・店舗間コミュニケーションツール
- シフト管理システム
不動産業
- 賃貸管理システム
- 売買仲介システム
- AI不動産査定書作成ツール
- AI賃料査定システム
文教/官公庁/地方自治体
- 教務系業務支援システム
- 学習支援システム/デジタル教材
- 学習塾/スクール向け学習管理システム(LMS)
- 自治体向け基幹系業務システム
- 自治体向け内部管理事務システム
サービス業
- PMS
- セルフチェックインシステム
- レベニューマネジメントシステム
- 外食業向け基幹系システム
- 外食業向け予約管理システム
- 電子チケット販売/管理システム
◆本記事は「業種別IT投資動向/DX市場の将来展望 2026年版 IT投資編」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。