株式会社富士経済は、データヘルス計画開始以降、被保険者や被扶養者の健康増進の目標達成を目指して保健事業に取り組んでいる健康保険組合(以下、健保)において、リソースや専門性の観点から進むであろうヘルスケアサービス採用の実態を調査しました。その結果を「健康保険組合のヘルスケアサービスの需要動向とデータ二次利用の方向性」にまとめました。
この調査では、様々な業態から1組合をサンプリングした健保12組合を対象に、サービスベンダーが提供するヘルスケアサービスの採用実態をはじめ、採用に至った背景や採用決定のキーパーソン、被保険者や被扶養者に関する健診・レセプトデータ等の健康データの一次利用や二次利用に対する方針、今後の課題やニーズを把握しました。また、健保12組合の予算から企業健保(単一・総合)全体の健診・保健指導業務委託予算(ポテンシャル)を推計しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「健康保険組合のヘルスケアサービスの需要動向とデータ二次利用の方向性」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.ヘルスケアサービス採用実態
採用サービス数
サービスベンダーが提供する、特定保健指導代行、PHR、健康診断事務代行、サービスメンタルヘルス対策といった4つのヘルスケアサービスを対象としました。
健保12組合で55のサービスを採用していました。平均すると1組合当たり4.6になります。三分の二の組合が特定保健指導代行サービスを複数採用していました。
サービス別採用率
特定保健指導に関する業務を請け負う特定保健指導代行サービスの採用率は100.0%でした。RIZAPやオクタウェル、保健支援センター、ベネフィット・ワン、Wellmiraといったベンダーのサービスの採用が多かったです。外部サービスを採用しつつ特定保健指導業務の一部を自前で行う健保も見られますが、ほとんどの業務がアウトソーシングされていました。保健師等の専門職が在籍していない、または、参加率向上のノウハウ持っていない健保が多いことが要因とみられます。
クラウドで個人の健康情報を管理するPHR(Personal Health Record)サービスの採用率は66.7%でした。JMDCやWellmiraなどのサービスが採用されていました。サービス採用健保8組合のうち、PHRの一部を自前で行う健保が1組合見られました。また、サービス未採用健保の中には、システムベンダーに依頼して健保専用のPHRを構築する例が見られました。
健保の健康診断に関する業務を請け負う健康診断事務代行サービス、健保が被保険者の属する企業(以下、企業)のメンタルヘルス対策を支援するメンタルヘルス対策サービスの採用率は50.0%でした。健康診断事務については、被扶養者の健診手配などにサービスを利用するケースが多く見られました。一方で被保険者の健康診断事務に利用するケースは比較的少なかったです。メンタルヘルス対策については、企業が主導しているケースが多く、サービス導入の目的も全てが相談窓口サービスでした。ティーペックやMBK Wellnessなどのサービスが採用されていました。
2.後期高齢者支援金の加算・減算制度に対して
後期高齢者支援金とは75歳以上(または65ー74歳で一定の障害がある方)が加入する「後期高齢者医療制度」の医療費を支えるため、現役世代が加入する健保から拠出される金額のことで、加算・減算制度とは健保の特定健診・特定保健指導の実施率や予防・健康づくり、医療費適正化への取り組み状況を評価し、支援金の額を最大10%加算または減算する制度です。
加算・減算制度の減算要件を重視している健保はありませんでした。多くの健保が減算対象となることは保健事業の推進の結果に過ぎず、減算要件に合わせて保健事業計画を変更したり施策への注力度を変化させたりするケースはほとんどみられませんでした。ただし、健保の財政を直接的に圧迫する加算対象となることに対する忌避感はいずれの健保でも強く、そのため、多くの健保にとっては「加算対象となることは避けるべきだが、減算対象となることは目標ではない」という位置づけです。
3.健康データの一次、二次利用の状況
健保による被保険者・被扶養者に関する健康データの一次利用は、健保職員によるExcel等や外部集計ツール、基幹業務システムを用いた健診・レセプトデータ、PHRデータの閲覧・集計・分析であり、健保が基本的な保健事業を推進するためのPDCAサイクルでの利用となっています。保健事業内での活用にとどまるため、健保の個人情報保護方針やプライバシーポリシー内に利用目的をあらかじめ明記しておき被保険者・被扶養者の同意は取得しないケースが大半です。
二次利用にはデータを提供していない健保が過半数となりました。個人情報保護の観点やデータ提供によるベネフィットが健保側に少ないことなどが要因とみられます。一方、データを提供している例では、基本的には匿名加工等個人および団体が特定されない加工が施されたデータにとどまっています。サービスベンダーのデータ利活用機運が高まる中、依然として健保側が感じているデータの第三者提供に対するハードルは高いです。今後データの利活用が進むには健保側・サービスベンダー側ともデータリテラシーの向上と、データに関与するステークホルダー全体に対するメリット向上が重要とみられます。
4.企業健保(単一・総合)における健診・保健指導業務委託予算ポテンシャル
調査対象とした健保12組合における、2024年度の保健事業予算に占める特定健康診査事業予算、特定保健指導事業予算、保健指導宣伝予算の割合は、それぞれ平均で8.17%、5.15%、4.49%でした。これら三つの予算は、健診・保健指導業務委託予算の中心です。これらの割合を2024年度企業健保(単一・総合)保健事業予算合計である4,664億円(出典:健康保険組合連合会「令和6年度(2024年度)健康保険組合の予算編成状況」に掛け合わせ、健診・保健指導業務委託ポテンシャルを約830億円と推計しました。
【参考】本記事で使用した「健康保険組合のヘルスケアサービスの需要動向とデータ二次利用の方向性」に掲載している調査対象市場
健康保険組合12組合(各業態から1組合)
- 繊維製品製造業
- 印刷・同関連業
- 機械器具製造業
- 卸売業
- 飲食料品小売業
- 金融業/保険業
- 運輸業
- 情報通信業
- 宿泊業/飲食サービス業
- 教育/学習支援業
- 生活関連サービス業/娯楽業
- 学術研究/専門・技術サービス業
ヘルスケアサービス
- 特定保健指導代行サービス
- PHRサービス
- 健康診断事務代行サービス
- メンタルヘルス対策サービス
◆本記事は「健康保険組合のヘルスケアサービスの需要動向とデータ二次利用の方向性」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。