株式会社富士経済は、FCV向けで進めてきた技術開発が高度に進化し、今後は水素社会の形成やカーボンニュートラルの実現に向け多用途展開が期待される燃料電池関連の市場を調査しました。その結果を「2025年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめました。
この調査では燃料電池システム8品目、スタック部品10品目について、最新の市場動向をまとめ将来を展望しました。また、燃料電池の多用途化に向けて課題となる水素供給設備の整備状況や、各国の政策、アライアンス動向についても調査しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、『2025年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望』をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
1.燃料電池システムの世界市場
FCV(FC乗用車・タクシー)、FCトラック・バス、燃料電池産業用車両、燃料電池大型駆動用、燃料電池小型駆動用、産業・業務用燃料電池、家庭用燃料電池、ポータブル/バックアップ用燃料電池の8品目を対象とします。
2025年度の市場は5,126億円が見込まれます。現状、産業・業務用燃料電池が最も大きく、データセンター向けや発電用を中心に米国や韓国で市場が拡大しています。次いでFCトラック・バスの規模が大きく、中国を中心に市場が拡大しています。
今後、2030年度ごろまではFCVやFCトラック・バス用が市場をけん引すると予想され、特にトラックやバスなどの大型・長距離走行車両への導入が進むとみられます。2030年度以降はFCスタックの多様化に伴ってコスト低減が進むことにより、フォークリフトや農業機械などの産業用車両、鉄道や船舶、航空機といった大型駆動用、ドローンなどの小型駆動用へと導入の幅を広げていくと予想されます。
将来的には、カーボンニュートラルの取り組みの中で、水電解装置との組み合わせによる水素貯蔵や、化石燃料からシフトしたブルー/グリーン水素やバイオ燃料、e-メタンなど様々な燃料に対応可能なエネルギーデバイスとして需要が高まると期待されます。
2.スタック部品の世界市場
PEFCはFCV、FCトラック・バスなどの移動体が主な需要先であり、FCトラック・バス向けが最大の規模です。日本や韓国の自動車メーカーでは、量産化されたスタックを乗用車以外の用途に展開する動きが活発で、船舶や鉄道などの大型駆動用、定置用燃料電池へ広がる事例も多数登場しています。今後多用途化により市場は大きく拡大していき、量産によって低コスト化も期待されます。
SOFCは、2025年度時点では95%以上が産業・業務用燃料電池向けであり、一部家庭用燃料電池向けも見られます。量産メーカーが限定されており、普及に向けてはコストの高止まりが障壁となっていますが、船舶やSOEC(固体酸化物型電解セル)など多用途展開を含めた量産体制の構築や、セルスタックの開発・材料代替、生産委託などによりコストの低減が図られています。近年メタル支持型セルスタックの量産化も進められており、これの採用によって600℃程度の低温作動化やコスト低減、移動体への導入などが期待されます。
◆注目個別市場サマリー
1.FCトラック・バス(トラック・バス向け燃料電池)
トラックやバスの駆動用電源として使用される燃料電池(FC)システムを対象とします。
2025年度の世界市場は1,044億円が見込まれます。足元では車両や燃料の価格が高いことや水素インフラ不足のため、大きな伸びにはなっていませんが、長距離走行・大型車両が想定されるトラック・バスは燃料電池の利用が有望視されています。
トラック・バスの電動化には航続可能距離や車両総重量などの課題がありますが、燃料電池駆動にすることで、これら課題を解決できる可能性があります。そのため、FC車両の開発の重点を乗用車から商用車へ転換する動きが世界的にみられ、市場は2030年度以降大きく拡大すると予想されます。CO2排出車両の規制厳格化によるペナルティや車両導入・燃料費に対する補助金などのインセンティブも導入を後押しするとみられます。
FCトラック・バスの普及には水素インフラの構築が必要不可欠であり、世界的に2010年代後半より水素ステーションの整備が進められてきました。しかし、水素需要の停滞による原料コストの上昇や水素ステーションの老朽化といった課題があり、国や地方自治体では政策や補助などでのサポートを進めています。
現状、アジアが需要の大半を占め、特に中国がけん引しているほか、韓国でも導入が増えています。中国は、FC商用車の導入数で世界トップとなっています。中長期計画として、2025年で5万台、2035年には100万台の導入を計画しており、モデル都市群を中心にFCトラックの導入が進んでいます。FCバスの導入拡大に向けては、従来のバスの廃棄・切り替えに伴う補助金の引き上げなどを含んだ政策が2025年に開始するなど支援が進んでいます。中国市場に対し、日本や米国、欧州メーカーも参入を進め、早期の事業化を目指していくとみられます。
韓国は、2018年より水素社会形成へ向けた意欲的な取り組みがみられます。自動車メーカー大手の現代自動車からFCトラック・バスがラインアップされ2024年にはFCバス約1,000台が導入されるなど、市場が急拡大しました。中国企業のシェアが高いEVバスへの補助を縮小し、現代自動車が展開するFCバスへ補助を手厚くすることで導入が促進されています。
日本では、国内自動車メーカー5社が共同出資したCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)により小型FCトラックの導入と大型FCトラックの実証が行われています。小型FCトラックでいすゞ自動車とトヨタ自動車が、大型FCトラックでは日野自動車とトヨタ自動車が共同開発した車両の導入・実証が進められています。
2.産業・業務用燃料電池
商業施設、オフィスビル、工場、データセンターなどのユーザーが自家発電設備(一部BCP用途)として導入するものと、発電事業者が売電を目的に導入する燃料電池を対象とします。
米国と韓国で導入が進んでおり、2大市場を形成しています。米国では導入インセンティブにより工場や小売店舗、データセンターへの導入が進んできました。AI関連の設備投資拡大に伴うデータセンター需要の増加から電力需給バランスへの影響が懸念されています。5年以内に容量ベースで50GW以上のデータセンターが建設されるとの見通しもあり、比較的短い施工期間でオンサイト発電が可能な低炭素電源である燃料電池のニーズが拡大するとみられます。
韓国は発電用が市場の大半を占めており、各種補助金や義務制度を背景に導入が進んできました。2023年よりクリーン水素発電義務化制度(CHPS)がスタートし、入札での導入が進められています。2040年には累積8GWを導入目標としており、市場拡大が期待されます。
日本は、業務用燃料電池の補助金終了の影響もあり、近年導入が減少しています。現状では具体的な動きは見られませんが、再生可能エネルギー導入の中で系統不安を抱える地域や、データセンターを中心に電力需要の拡大が見込まれる地域、水素インフラの普及に注力する地域などにおいて普及が期待されます。各種法規制や水素価格、水素貯蔵・供給設備の構築などの課題がありますが、業界団体による規制緩和の提言が進められているほか、各種プロジェクトの進展により徐々に改善が進むとみられます。
3.FCV(FC乗用車)
燃料電池システムを主要動力源として搭載する乗用車(タクシーも含む)を対象とし、燃料電池システムと充電可能な駆動用バッテリーを併用したプラグインFCV(PFCV)を含みます。市場は燃料電池システムを含む車体価格で算出しています。
EVの低価格化や水素ステーションなどのインフラ問題、水素価格の高止まりなどから2024年度の市場は縮小しました。FCトラック・バスの先行普及により、FCVでも車両性能の向上や価格の引き下げ、水素ステーションの整備といった普及への素地が整うことで将来的な市場成長が期待されます。市場は2035年度には3兆円、2040年度には10兆円を超えると予測されます。
日本では、国内自動車メーカー5社が共同出資したCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)により小型FCトラックの導入と大型FCトラックの実証が行われています。小型FCトラックでいすゞ自動車とトヨタ自動車が、大型FCトラックでは日野自動車とトヨタ自動車が共同開発した車両の導入・実証が進められています。
【参考】本記事で使用した『2025年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望』に掲載している調査対象市場
燃料電池システム
- FCV(FC乗用車)
- FCトラック・バス
- 燃料電池産業用車両
- 燃料電池大型駆動用
- 燃料電池小型駆動用
- 産業・業務用燃料電池
- 家庭用燃料電池
- ポータブル/バックアップ用燃料電池
スタック部品
PEFC
- PEFCスタック
- PEFC電極材
- PEFC電解質
- PEFCセパレーター
- PEFC GDL
SOFC
- SOFCスタック
- SOFC燃料極(アノード)
- SOFC空気極(カソード)
- SOFC電解質
- SOFC金属インターコネクタ
◆本記事は『2025年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望』より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。