株式会社富士キメラ総研は、先進国では普及期に入っていますが、新興国では新型コロナ流行の影響を受けたスケジュールの遅れが発生する中、インフラシェアリングや汎用サーバーを用いた基地局ネットワークの仮想化やDSS技術の採用など新たな動きがみられる5G通信関連について、その基地局やネットワーク関連機器の世界市場を調査しました。その結果を「5G/次世代通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2022」にまとめました。
この調査では、基地局3品目、エッジ機器7品目、ネットワーク構成機器関連製品18品目、エッジ機器用デバイス・材料12品目の世界市場を分析し、将来を予想しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「5G/次世代通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2022」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
基地局の世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
|
|
C-RAN |
126万台 |
153.7% |
198万台 |
2.4倍 |
|
D-RANスモー |
13万台 |
86.7% |
20万台 |
133.3% |
|
D-RANマクロ |
69万台 |
103.0% |
44万台 |
65.7% |
|
合 計 |
208万台 |
126.8% |
262万台 |
159.8% |
2021年は、新型コロナウイルス感染症の流行や半導体の供給不足などにより、敷設計画やサービスインのスケジュールの遅れが発生したため、市場は縮小しました。2022年は、各国の通信キャリアによる5G通信環境への設備投資が活発化しているため、市場拡大が予想されます。現状はC-RAN基地局とD-RANマクロセル基地局によるSub6対応が中心であり、ミリ波への投資は遅れています。ミリ波については、当面D-RANスモールセル基地局などでスポット投資が行われるとみられます。その後、自動運転をはじめとしたキラーアプリケーションが確立してミリ波通信の必要性が増加するに伴い、カバーエリアを拡大するための投資がC-RAN基地局で進むと予想されます。
C-RAN基地局は、BBU・CU・DUとRRH・RUが分離され、光ファイバーで接続した複数のRRH・RUをBBU・CU・DUが集中的に制御する構成となっています。
基地局収容スペースの減少やネットワーク効率化が可能なことから市場は拡大するとみられます。特に、5G通信の初期投資としてカバーエリア拡大の観点から、人口密集度が高くトラフィック量が多い都心部では、光張り出し局の増設によるネットワーク拡張性を持たせた設計のニーズが高まると予想されます。C-RAN基地局は、LTEと5G通信を収容できることからBBU・CU・DU全体の処理性能や電源容量などで接続できるRRH・RU数が決定します。当面はLTEと5G通信が混在する仕様となりますが、将来的には収容されるRRH・RUが全て5G通信化するとみられます。今後、中国を中心に需要が増え、2030年の市場は198万台が予測されます。
D-RANスモールセル基地局は、BBUとRRHが一体化した出力100W未満のD-RAN基地局を対象とします。1局当たりのカバーエリアが比較的狭い場所に設置されることが多く、高トラフィックエリアにおけるユーザーの通信品質向上などを目的に採用されています。
LTE向けは投資の一巡により需要が減少し、Sub6対応ではC-RAN基地局の採用が中心となるため、それらを目的とした敷設数は減少するとみられます。しかし、ミリ波対応ではアンテナが短く、BBU・RRH・アンテナ一体型製品の小型化が可能なためD-RANスモールセル基地局が敷設され、当面のミリ波投資は高トラフィックエリア向けなどスポット投資が中心になるため、短期的には需要増加が期待されます。また、屋内でのローカル5Gなどの企業向けプライベートネットワーク構成での採用が増えるとみられます。
D-RANマクロセル基地局は、BBU・RRHが一体化した出力100W以上のD-RAN基地局を対象とします。スモールセルに比べて1局当たりのカバーエリアが広く、出力によっては数10kmのエリアをカバーできるなどの利点があります。
投資が一巡したLTE向けは需要が減少していますが、5G通信向けはC-RAN基地局の導入が難しい光ファイバー網が未整備の地域を中心に堅調です。光ファイバー網の構築が困難な新興国や欧州などでは、モバイルバックホールをマイクロ波で行うネットワーク構成が広がりをみせているため、2022年頃まではSub6対応を中心に市場拡大が予想されます。しかし、今後採用が広がるミリ波では、D-RANマクロセル基地局による運用は少ないため、中長期的には5G通信投資の一巡とC-RAN基地局への移行により市場縮小が予想されます。
◆注目個別市場サマリー
1.スマートフォン、CPE端末、ノートPCの5G通信対応製品の世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
|
|
スマート |
7億4,300万台 |
128.8% |
12億5,000万台 |
2.2倍 |
|
CPE端末 |
510万台 |
170.0% |
1,600万台 |
5.3倍 |
|
ノート |
110万台 |
157.1% |
1,690万台 |
24.1倍 |
5G通信対応スマートフォンは、2020年に新型コロナ流行による経済活動の低迷から需要が落ち込みましたが、2021年は経済活動の回復や製品価格の低下によりユーザーの買い替えが進み、市場は前年比2.5倍となりました。2022年も堅調な伸びが期待されますが、前年からの半導体不足の影響が継続しており、メーカー各社はチップセットの在庫確保に注力していますが、特に下位メーカーの生産体制への影響が懸念されます。また、スマートフォン最大の需要地である中国市場を中心に買い替えサイクルが徐々に長期化しており、需要の飽和やロックダウンなども不安視されるため、市場の伸びは鈍化が予想されます。
現状、Sub6対応が市場の大半を占めており、2030年でも8割以上を占めるとみられます。ミリ波対応は部品コストが高く、価格帯がハイエンドからフラッグシップの一部製品に限られることから、Sub6対応と比べて市場は小さいです。また、ミリ波通信は対応国・地域が限られており、現状では中国が非対応なことも普及の障害となっています。
5G通信対応CPE端末(顧客構内設備端末)は、通信サービスを利用するユーザーや拠点、施設などの内部に設置され、屋外からの電波の受信および屋内機器との中継器の役割を果たす製品を対象とします。光ファイバーの敷設率が低い国や地域でインフラとして、また、光ファイバーの敷設外エリアにおけるラストワンマイル対策などで利用されるケースが多いです。
2021年はテレワークに伴う通信環境の整備ニーズが継続していることにより、市場は大きく拡大し、前年比3.0倍となりました。今後は、すでにCPE端末の普及が進んでいる地域で、LTE対応製品から5G通信対応製品への置き換えが進むとみられます。現状はSub6対応製品が中心です。ミリ波対応製品はミリ波を利用したアプリケーションが確立していないため需要が低調であり、今後もSub6対応製品を中心に市場拡大が予想されます。
5G通信対応ノートPCの市場はまだ小さいですが、堅調な拡大を続けています。2021年は半導体を中心とした部材不足が生産体制に影響しましたが、市場は前年比75.0%増の70万台となりました。
ノートPCの通信方式は依然としてWi-Fiによる接続が主流であり、モバイル通信はビジネス用途の一部にとどまっています。現状、5G通信対応製品はユーザーごとのカスタム対応が多く、5G通信モジュールを搭載するため高価格となり、また、通信費の負担も増えることなどから、ノートPC市場に占める比率はまだ小さいです。しかし、各メーカーが5G通信対応製品の投入を進めており、2030年の市場は1,690万台が予測されます。
2.エッジ機器用デバイス・材料の世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2030年予測 |
2021年比 |
|
|
RF |
2兆1,100億円 |
105.0% |
2兆3,000億円 |
114.4% |
|
半導体 |
7兆9,500億円 |
105.5% |
8兆2,000億円 |
108.8% |
|
基板関連 |
1兆3,221億円 |
103.1% |
1兆7,139億円 |
133.6% |
|
ノイズ |
112億円 |
106.7% |
164億円 |
156.2% |
RFデバイスはアンテナ、フィルターデバイス、RFモジュール、水晶デバイスを対象とします。RFモジュールは5G通信対応端末の普及が進むことにより、MIMO機能に必要なダイバーシティモジュールを中心に、端末1台当たりの対応する周波数帯が増えることからデバイス搭載個数が増加するため、伸びが期待されます。また、フィルターデバイスも5G通信端末の普及に伴い、搭載が増えて伸びるとみられます。
半導体デバイスはベースバンドプロセッサー、アプリケーションプロセッサー、Wi-Fiチップを対象とします。Wi-Fiチップはスマートフォンに加え、白物家電やAV機器など搭載アプリケーションの増加に伴い伸びが予想されます。ベースバンドプロセッサーは、スマートフォン以外でも搭載が増えるとみられます。
基板関連はビルドアッププリント配線板、低誘電フレキシブルプリント配線板、低誘電フレキシブル銅張積層板を対象とします。ビルドアッププリント配線板、低誘電フレキシブルプリント配線板が、5G通信対応スマートフォンのラインアップ増加によって堅調な市場拡大が予想されます。
ノイズ対策材料はノイズ抑制シートと電磁波シールドペーストを対象とします。電磁波シールドペーストは、モバイル機器の使用周波数帯の拡大によりデバイス内でのノイズ対策ニーズの高まりを受け、デバイスを隙間なく、個別にシールドできるため採用増加が予想されます。また、5G通信端末のアンテナモジュール搭載が増加し、設計段階でのノイズ対策が難しくなるため、ノイズ抑制シートの採用が増えるとみられます。
【参考】本記事で使用した「5G/次世代通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2022」に掲載している調査対象市場
アプリケーション
基地局
- D-RANマクロセル基地局
- D-RANスモールセル基地局
- C-RAN基地局
エッジ機器
- スマートフォン
- CPE端末
- ヘッドマウントディスプレイ
- スマートグラス
- 自動車
- ノートPC
- 自律走行AGV
ネットワーク構成機器関連製品
ネットワーク構成機器・光通信デバイス
- BBU・CU・DU
- RRH・RU
- その他スモールセル基地局(DAS、DRSなど)用RRH
- NTN(HAPS、LEO)用VSAT
- 光伝送装置
- ルーター
- モバイルフロントホール用光トランシーバー
- モバイルミッドホール用光トランシーバー
- モバイルバックホール用光トランシーバー
基地局用デバイス・材料
- 基地局用アンテナ
- 基地局用RFフロントエンド
- 基地局用GaNパワーアンプ
- 基地局用プロセッサー
- 基地局用リジッド基板
- 透明アンテナ用導電性フィルム
- 5G通信用反射板
- 基地局用放熱シート
- 基地局用放熱ギャップフィラー
エッジ機器用デバイス・材料
RFデバイス
- アンテナ(MID・FPC・AiP)
- フィルターデバイス
- RFモジュール
- 水晶デバイス
半導体デバイス
- ベースバンドプロセッサー
- アプリケーションプロセッサー
- Wi-Fiチップ
基板関連
- ビルドアッププリント配線板
- 低誘電フレキシブルプリント配線板
- 低誘電フレキシブル銅張積層板
ノイズ対策材料
- ノイズ抑制シート
- 電磁波シールドペースト
◆本記事は「5G/次世代通信を実現するコアテクノロジーの将来展望 2022」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。