株式会社富士経済は、自動車部品を中心に使用され、新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けた落ち込みから自動車生産台数が回復することにより、需要増加が期待される熱可塑性エラストマーと合成ゴムの世界市場を調査しました。その結果を「2023年 高機能エラストマー&ゴム市場の現状と将来展望」にまとめました。
この調査では、熱可塑性エラストマー15品目、合成ゴム12品目、応用製品3品目について各品目の市場動向をまとめました。また合成ゴムでもリサイクル材料やバイオマス原料の活用機運が高まりつつあることから、リサイクル品/バイオマス品の現状や課題点、新規開発動向についても整理しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2023年 高機能エラストマー&ゴム市場の現状と将来展望」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
熱可塑性エラストマー、合成ゴムの世界市場
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2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
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熱可塑性 |
480万トン |
103.0% |
577万トン |
123.8% |
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合成ゴム |
1,565万トン |
103.4% |
1,819万トン |
120.2% |
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合 計 |
2,046万トン |
103.4% |
2,396万トン |
121.1% |
※市場データは四捨五入しています
2020年の市場は新型コロナ流行の影響による世界的な生産活動の低迷を受けて縮小しました。2021年は経済活動の再開によって需要が増加したことから、市場は前年比8.8%増と拡大しました。また資源価格の高騰や物流のひっ迫によって製品価格が上昇しました。2022年も同様の状況が続いており、市場は伸び悩んでいますが、前年比3.4%増が見込まれます。
熱可塑性エラストマー(TPE)は、アスファルトや樹脂の改質剤、粘接着剤、各種成形品向けコンパウンドなどさまざまな用途に使われています。TPEのうちTPS各種(スチレン系のSBS、SIS、水添スチレン系エラストマーなど)は粘接着剤向けや日用雑貨品向けなどが多いことで需要が底堅く、中国や北米での需要増加によって伸びています。またオレフィン系各種やポリエステル系エラストマーなどは自動車の各種成型部品向けが多いです。市場は新型コロナの影響から回復しつつありますが、2022年は自動車の生産台数が当初の計画を下回るとみられ、回復のスピードは鈍化するとみられます。
合成ゴムは自動車用タイヤが主な用途です。2021年は経済活動の再開により自動車やタイヤが増産されたことで合成ゴムの需要も増加しました。特に低燃費タイヤに用いられるS-SBRの需要が旺盛です。世界的な自動車生産台数の増加や経済成長によって、合成ゴムの需要増加が期待されます。2022年は原材料不足に加え輸送費や燃料費の高騰もあって需給バランスが不安定であり、製品価格が上昇していますが、2023年以降は需給バランスが安定することで製品価格が低下し、経済成長による需要増加に合わせて市場は拡大するとみられます。
リサイクル品
TPEは合成ゴムと比較してリサイクル性に優れており、ポスト・インダストリアル・リサイクル(PIR)材、ポスト・コンシューマ・リサイクル(PCR)材の利活用や再生事業者との連携などを通じて、リサイクル品の開発や製品化の機運が高まってきています。
合成ゴムは一般的にリサイクルが難しいとされ、ゴムメーカー(サプライヤー)からリサイクルグレードとして供給されることはほとんどなく、サーマルリサイクルを除き廃ゴムを活用してゴムを再生・製造するケースは限られます。現在スチレンモノマーやブタジエンモノマーを廃プラスチックから再生し合成ゴムの原料に活用する動きがあり、事業化が目指されています。
バイオマス品
TPEは欧州の参入企業を中心にマスバランス方式を採用したエラストマー製品の開発・製品化が進んでいます。マスバランス方式はバイオマス原料と石油化学品などを混合して製造した製品のうち、バイオマス原料の使用量に相当する分をバイオマス原料100%、残りを石油化学品由来100%とみなす方式です。バイオマス原料への転換は技術的に困難であり、設備投資などの負担もありますが、マスバランス方式の導入によりハードルを下げ、バイオマス原料の使用を促進する効果があるとされます。2020年代に入り日本でもマスバランス方式を導入したバイオマス由来成分を配合した製品・グレード群が登場しています。
合成ゴムでもバイオマス品が増加しています。日本市場ではバイオマスナフサやバイオマスブタジエンなど、上流原料を海外市場から調達し生産したマスバランス方式に対応したグレードが登場しています。
リサイクル品、バイオマス品ともに、100%石油化学品よりもコストがかかり、コスト転嫁の余地が少ない用途ではブランドオーナーなどの意識により採用が左右されることや、トレーサビリティの確保について整備が必要であることが今後への課題として挙げられます。
◆注目個別市場サマリー
1.スチレンブタジエンゴム(SBR)【合成ゴム】
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2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
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E-SBR |
601万トン |
102.0% |
676万トン |
114.8% |
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S-SBR |
137万トン |
104.6% |
174万トン |
132.8% |
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合 計 |
738万トン |
102.5% |
850万トン |
118.1% |
天然ゴムの代用として開発された合成ゴムであり、製造方法の違いによりE-SBR(乳化重合スチレンブタジエンゴム)とS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)に分けられます。用途は自動車用タイヤを主体とし、そのほかに工業用品樹脂改質で用いられます。タイヤは生産本数のうち多くがリプレイスメントタイヤであるため、市場は自動車生産台数の影響を受けにくいという特性があります。近年はS-SBRが低燃費・高性能タイヤに使用されて伸びています。
E-SBRは主に汎用タイヤに使われるほか、履物、ベルト、ホースなどの多用途で用いられています。タイヤ向けは自動車のEVシフトにより細かいポリマー設計が容易で高性能化が図れるS-SBRへの切り替えが進むため、日本市場は2025年ごろからマイナスに転じると予想されます。世界市場は海外において低燃費タイヤと並行して汎用タイヤ向けも増加するとみられ、堅調な伸びが予想されます。
S-SBRは低燃費タイヤ向けに使用されています。近年欧米や日本、一部のアジア地域で急速に浸透したことから、E-SBRを上回るペースで伸びてきました。今後は世界的な脱炭素の流れを受けて低燃費タイヤの需要は中国やロシアなどへ普及していくとみられ、2027年の市場は2021年比32.8%増が予想されます。S-SBRは日系メーカーが先行していましたが、海外メーカーが低価格品を投入したことにより、特にローエンド市場は価格競争が激化しています。今後は自動車の動力源や形態が増えることにより、多様化するニーズへの対応力やハイエンド品への開発が重要になるとみられます。
2.架橋型オレフィン系エラストマー(TPV)【熱可塑性エラストマー】
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2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
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32万トン |
103.2% |
41万トン |
132.3% |
自動車部品および建築・土木分野での需要が多く、中でも自動車のウェザーストリップ(シーリング材)が主な用途であるため自動車生産台数の影響を大きく受けます。新型コロナの流行による経済の停滞から回復し、2021年以降は市場拡大が続いています。近年は成型加工性の向上やコストダウンのため、エチレンプロピレンゴム(EPDM)からの切り替えが進んでいます。今後、自動車生産台数が本格的に復調することにより市場はさらなる拡大が期待されます。
世界市場では中国が最大の需要国であり、自動車生産台数の増加や建材用の需要増加によって拡大しています。中国やインドにおいてエアバッグカバーの搭載率が上がっていることや、側部へのエアバッグ搭載を義務付ける法令が施行されたことで長期的に需要が増加していくと予想されます。また北米ではEPDMからの代替や内装表皮材向けで切り替えの余地が残されており、今後の成長が期待されます。
日本市場は主要用途である自動車部品用途でEPDMからの切り替えはほぼ完了しているため、自動車生産台数の動向に大きく影響されます。自動車のほかには建材で目地などのシーリング用途で底堅い需要を獲得しています。
【参考】本記事で使用した「2023年 高機能エラストマー&ゴム市場の現状と将来展望」に掲載している調査対象市場
熱可塑性エラストマー(TPE)
- スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロックコポリマー(SBS)
- スチレン・イソプレン・スチレン・ブロックコポリマー(SIS)
- 水添スチレン系エラストマー(ニートポリマー)
- 水添スチレン系エラストマー(コンパウンド)
- 単純ブレンド型オレフィン系エラストマー(s-TPO)
- 架橋型オレフィン系エラストマー(TPV)
- 重合型オレフィン系エラストマー(RTPO)
- 塩ビ系エラストマ-(TPVC)
- 塩素化ポリエチレン系エラストマー(CPE)
- ウレタン系エラストマー(TPU)
- ポリエステル系エラストマー(TPC)
- ポリアミド系エラストマー(TPAE)
- α-オレフィンコポリマー
- アクリル系エラストマー
- バイオマス系エラストマー
合成ゴム
- スチレンブタジエンゴム(SBR)
- ポリブタジエンゴム(BR)
- ポリイソプレンゴム(IR)
- クロロプレンゴム(CR)
- アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)
- ブチルゴム(IIR)
- エチレンプロピレンゴム(EPDM)
- フッ素ゴム(FKM・FEPM)
- エピクロルヒドリンゴム(ECO)
- アクリルゴム(ACM)
- シリコーンゴム
- ウレタンゴム(TSU)
応用製品
- タイヤ
- EV用エラストマー・ゴム
- 医療器具
◆本記事は「2023年 高機能エラストマー&ゴム市場の現状と将来展望」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。