株式会社富士経済は、各国の経済状況や原料需給に影響される汎用エンプラ、EV化の進展や電気電子機器の高性能化に後押しされるスーパーエンプラ、および原料の世界市場を調査し、その結果を「2023年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」にまとめました。
この調査では、汎用エンプラ7品目、スーパーエンプラ12品目、原料8品目の市場規模、用途動向、企業動向などについて最新の情報を網羅しました。また近年の状況を踏まえ、需給動向、価格動向、環境対応についても整理しました。「(同)下巻」において特殊エンプラ、機能性樹脂および原料の市場を調査し、今回の調査結果とあわせて、エンプラ市場の全体像をまとめています。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2023年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
汎用エンプラ、スーパーエンプラの世界市場
|
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
|
|
汎用 |
1,000万トン |
98.0% |
1,172万トン |
114.9% |
|
スーパー |
51万トン |
104.1% |
65万トン |
132.7% |
|
合 計 |
1,052万トン |
98.4% |
1,237万トン |
115.7% |
※市場データは四捨五入しています
エンプラはエンジニアリングプラスチックの略称であり、強度や耐熱性に優れるプラスチックを指します。近年経済成長や自動車の電装化・軽量化による需要増加で市場は拡大してきましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて低迷しました。2021年は米国を中心とした経済活性化策の効果もあり、大きく回復しました。
2022年は最大の需要地である中国の経済低迷や自動車減産の影響を受け、汎用エンプラが苦戦していることから、市場は前年を下回るとみられます。2023年は主要国でインフレ抑制を目的とした利上げが行われた影響で経済成長が抑えられることから、市場も小幅な伸びが予想されます。2027年に向けては景気回復が期待されるとともに、半導体などの部品不足が解消され自動車生産なども堅調に伸びるとみられ、エンプラの需要が増加していくと予想されます。
汎用エンプラは自動車や電気電子機器/産業機器などで幅広く用いられています。新型コロナの影響やウクライナ危機によって需給が不安定になっており、市場は増減を繰り返しています。2022年は半導体不足により自動車生産台数が伸び悩んでいるため、市場は縮小するとみられますが、2023年以降にサプライチェーンが正常化し、長期的には経済成長に伴って拡大が予想されます。
スーパーエンプラは汎用エンプラを上回る耐熱性を持ち、製品によっては耐電圧や低誘電率などの特性を活かした用途開拓が進められています。用途が特殊であることが多く、景気動向よりも採用動向によって市場が左右されます。2021年に新型コロナの流行により抑えられていた経済活動が再開したことで主要な用途である自動車の生産が回復に向かい、市場は拡大しました。2022年も同様の傾向であり、今後は自動車部品の金属代替や小型軽量化に加え、スマートフォンの高機能化、航空機需要の回復などによりスーパーエンプラの需要は増加していくとみられ。市場は2027年までは毎年5%程度の拡大が予想されます。
◆注目個別市場サマリー
1.液晶ポリマー(LCP)【スーパーエンプラ】
|
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
|
5万7,710トン |
101.4% |
6万7,160トン |
118.0% |
主にSMTコネクタをはじめとした電気電子機器で採用されており、スマートフォンの生産台数が市場に影響を与えています。2022年前半はスマートフォン生産台数が前年を下回っており、通年でも減少する可能性があります。しかし端末の高機能化によって、1台当たりのLCPの使用量が増加しているため、市場は拡大が続くとみられます。
2023年以降もスマートフォンの5G通信対応の進展により電子部品の高密度化や内部基盤の多層化が進んでいることに加え、スマートフォンカメラの多眼化や高性能化でLCPの需要が増加していくと予想されます。また自動車のEV化や電装化の進展も、コネクタなど各種部品でのLCPの需要増加に繋がることから、市場は拡大が続くとみられます。
2.ポリアリルエーテルケトン(PAEK)【スーパーエンプラ】
|
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
|
9,500トン |
109.8% |
1万4,550トン |
168.2% |
自動車や航空機部品などの輸送機器、電気電子機器、産業機器など幅広く使用されています。2021年は新型コロナ流行の影響で後ろ倒しになった需要を取り込んだことに加え、半導体製造装置向けや自動車向けが増加したことから市場は大きく拡大しました。2022年も引き続き半導体製造装置向けが好調であるほか、石油や天然ガスの価格高騰や調達リスクの増大を受けて、シェールガス・オイルの掘削部品向けが回復しつつあり、市場はさらに拡大するとみられます。
今後は、米国を中心に新型コロナ流行の影響で低迷していた航空機部品向けの需要が回復していくとみられ、既存部品に加え、構造材マトリクス樹脂での需要増加が予想されます。また自動車でもPAEK製部品の採用が増えており、自動車生産台数が増加することで市場は拡大が続くとみられます。
3.ポリブチレンテレフタレート(PBT)【汎用エンプラ】
|
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
|
102万4,500トン |
96.0% |
125万4,900トン |
117.5% |
自動車向けでは電装部品や外装部品、機構部品、電気電子機器ではコネクタを中心に使用されています。2021年は経済活動の再開に加え、巣ごもり需要や先行き不安から在庫確保の動きがあり、コネクタメーカー向けが増加したことで市場は拡大しました。2022年は半導体不足などによる自動車生産台数の伸び悩みや、中国でのゼロコロナ政策による経済活動の停滞を受け、市場は前年を下回るとみられます。
2023年以降は自動車生産台数の増加に加え、EV化や自動車電装化の進展に伴って拡大が予想されます。電装部品は統合化や小型化が進む一方で、自動車1台あたりの使用数量が増加するため、PBTの需要増加に繋がるとみられます。
4.ポリアミド66(PA66)【汎用エンプラ】
|
2022年見込 |
2021年比 |
2027年予測 |
2021年比 |
|
129万5,600トン |
99.9% |
148万8,300トン |
114.7% |
主な用途は自動車であり、中でもエンジンルーム部品向けが主体です。2021年は経済活動の再開により自動車分野を中心に需要が急回復しました。一方で同年は北米の寒波の影響で原料であるADN、およびADNから製造されるHMDAの不足により、需給がひっ迫する事態も起こりました。2022年は中国のロックダウンの影響などから自動車生産台数が抑制されているため、市場は前年をわずかに下回るとみられます。なお、大幅な需要の増加がなかったことや、ADNの生産状況改善により前年よりも需給バランスは緩和しています。
今後も自動車生産台数の増加が市場拡大に大きく影響するとみられます。EV化の進展により、エンジンルーム部品向けは減少することが懸念されますが、バッテリーや制御関連の部位で需要が増加し、軽量化ニーズも一層高まると予想されます。市場は自動車向けを中心に拡大し、2027年は2021年比14.7%増が予測されます。ただし、PA66は従来から原料不足によって需給がひっ迫しやすく、安定供給のため他の樹脂への切り替えが起こる懸念もあります。
【参考】本記事で使用した「2023年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」に掲載している調査対象市場
汎用エンプラ(7品目)
- ポリカーボネート(PC)
- 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
- ポリアセタール(POM)
- ポリブチレンテレフタレート(PBT)
- ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)
- ポリアミド6(PA6)
- ポリアミド66(PA66)
スーパーエンプラ(12品目)
- ポリアミド46(PA46)
- ポリアミド11・ポリアミド12(PA11・PA12)
- ポリアミド610・ポリアミド612(PA610・PA612)
- ポリアミドMXD6(PAMXD6)
- ポリアミド6T(PA6T)
- ポリアミド9T(PA9T)
- ポリアミド10T・ポリアミド11T(PA10T・PA11T)
- ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)
- シンジオタクチックポリスチレン(SPS)
- ポリフェニレンサルファイド(PPS)
- 液晶ポリマー(LCP)
- ポリアリルエーテルケトン(PAEK)
原料(8品目)
- テレフタル酸(TPA)
- アジピン酸(ADA)
- ヘキサメチレンジアミン(HMDA)
- カプロラクタム(CPL)
- ビスフェノールA(BPA)
- 1,4-ブタンジオール(BDO)
- パラジクロロベンゼン(p-DCB)
- パラヒドロキシ安息香酸(p-HBA)
◆本記事は「2023年 エンプラ市場の展望とグローバル戦略 上巻」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。