株式会社富士経済は、就労者の高齢化や人手不足など様々な課題の解決や新型コロナウイルス感染症の流行などに対応するため、スマート化が進む農林水産関連の国内市場を調査し、その結果を「農林水産ビジネスの最前線と将来展望 2020」にまとめました。
この調査では、農業や水産業、畜産業のスマート化につながる施設やシステム、機器、サービス26品目の市場を調査・分析しました。また、センサーなどのキーテクノロジーの採用動向やデータ管理・分析、自動化・省力化などの技術開発動向、海外の市場動向などを明らかにしたほか、DX、バイオテクノロジー、SDGsに関する次世代注目ビジネスに取り組む30社の企業事例を捉えました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「農林水産ビジネスの最前線と将来展望2020」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
「農林水産ビジネスの最前線と将来展望2020」の全体サマリー
スマート化が進む農林水産関連の国内市場
農業や水産業、畜産業のスマート化につながる施設やシステム、機器、サービスを対象とします。
農林水産業では、就労者の高齢化や人手不足など様々な課題の解決や新型コロナウイルス感染症の流行などへの対応が求められる中で、植物工場や陸上養殖、閉鎖型畜舎など環境や生育をコントロールし生産を高度化したり、モニタリング・センシングや制御・自動化、データ管理・分析、AIなどのテクノロジーを活用して農林水産業をスマート化する施設やシステム、機器、サービスの市場が拡大しています。
スマート農業関連では、完全人工光型植物工場が導入規模の大型化や業務・加工向け野菜の需要増加などにより伸びています。農業用ロボットや水田水管理システム、農業用ドローン活用サービスなどは市場が立ち上がったばかりですが、栽培環境モニタリングシステムや農業用ドローン、GNSSガイダンスシステム/自動操舵システムなどは既に一定の市場規模があり、さらなる普及が期待されます。生産管理システムは各機器・システムと連携するスマート農業におけるデータ活用のプラットフォームとしての利用が期待されます。
スマート水産業関連では、陸上養殖システムや沖合養殖システムなど新しい養殖形態の普及を背景に関連機器、システムの需要が増加しています。中でも、自動給餌システムは業務負担の大きい給餌作業の自動化・省力化が図れるほか、魚の生育をコントロールできることから、今後高い伸びを維持するとみられます。
スマート畜産業関連では、人手不足や経営の大規模化を背景に、畜産ロボットの餌寄せロボットや搾乳ロボットなど作業の自動化・省力化を可能とする機器の需要が増加しています。また、現在は家畜モニタリングシステムや搾乳ロボットにより多様な生体・環境データが取得可能であることから、今後はそれらのデータを閉鎖型畜舎システムなどに活用する取り組みが進むとみられます。
◆注目個別市場サマリー
1.完全人工光型植物工場
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
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113億円 |
99.1% |
173億円 |
151.8% |
屋内などの密閉空間の中でLEDなどの人工光で植物を育成する植物工場を対象とします。
近年は植物工場産レタス類の需要増加から、栽培プラントの大規模化が進んでいます。これまでは主に小売店などの店頭に並ぶ一般消費者向けが中心でしたが、2017年後半から2018年初頭にかけて、台風や長雨、異常な寒冬の影響により露地物レタスの価格が高騰したことで、サラダやサンドイッチなどレタス類の消費量の多い中食や外食などの業務・加工向けでも安定調達が可能な植物工場産レタスに注目が集まり、市場が拡大しました。
2020年は春以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、メーカーの営業機会損失や、栽培事業参入を検討する企業の業績悪化の懸念から、一部で新規参入の延期や見送りがみられたため、市場は0.9%減が見込まれます。しかし、巣ごもり需要による小売や中食市場の拡大、夏場の天候不順による露地物の価格高騰などにより、改めて植物工場産野菜に対するニーズが高まっており、引き合いは増加しています。今後も自動化技術を取り入れた高単価案件の増加や、それぞれの立地や商圏の需要規模などに合わせた中小規模の植物工場の増加など、多様な展開が期待され、市場拡大していくとみられます。
2.農業用ドローン/ドローン活用サービス
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
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農業用ドローン |
40億円 |
173.9% |
90億円 |
3.9倍 |
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農業用ドローン |
4億円 |
142.9% |
9.2億円 |
3.3倍 |
農業用ドローンは、上空からの農薬や液体肥料の散布用途や、カメラを搭載して圃場を空撮し、圃場状況や農作物の生育状況の可視化、分析する目的で利用され、人手不足を背景に需要が増加しています。2019年は参入各社が新製品を投入したほか、農業用ドローンの仕様に関する規制が緩和されたことにより、市場は大幅に拡大しました。2020年初頭に需要は落ち着きましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による経営継続措置として農業用ドローンの導入が補助金支給の対象となったことで、前年並みの伸びを維持するとみられます。今後も市場は拡大していくと予想されます。
農業用ドローン活用サービスは、農薬・肥料散布代行サービスを中心に需要が増加しており、市場は堅調に拡大していくとみられます。近年は複数の企業により、リモートセンシングを活用した圃場管理サービスや生育診断サービス、ピンポイントでの農薬散布サービスの実用化・商用化が進められており、AIを用いた分析技術の高度化やセンシング対象の拡大によるサービスの拡充が図られていることから、今後も高い伸びで市場は拡大するとみられます。
3.陸上養殖システム
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
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12億円 |
100.0% |
33億円 |
2.8倍 |
陸上に設置した水槽で魚介類や海藻類を養殖するシステムのうち、ろ過槽や水温調節機・殺菌装置などを用いて用水を浄化し利用する循環式を対象とします。
陸上養殖システムは、海面養殖と比較して海水温度の上昇や台風・赤潮の発生などによる生育不良や大量へい死を回避することが可能であるほか、新規の養殖場の確保が容易であることから需要が増加しています。近年は新たに養殖業への参入を検討する事業者や、既存の事業者が飼育面積を拡大する目的で、試験的に導入を進めており、市場は堅調に拡大してきました。しかし、2020年は外食産業が低迷し水産物の出荷量が激減したため、事業者側では設備投資を抑制する動きが強まっており、市場は横ばいが予想されます。
世界人口の増加に伴う食糧危機の解決策として、陸上養殖による水産資源の増産が期待されていることから、新型コロナウイルス感染症の収束と共に市場は再び拡大していくとみられます。
4.閉鎖型畜舎システム
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
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228億円 |
101.3% |
310億円 |
137.8% |
牛舎と豚舎における閉鎖型畜舎システムを対象とします。畜舎内外に設置したセンサーと制御システム、換気ファンやカーテンなどの空調機器により畜舎内の温度や湿度などをコントロールすることで家畜のストレスを軽減し、快適な環境を保つことができます。
通常の開放型畜舎に比べると導入コストの負担が大きく、市場はほぼ横ばいでしたが、導入することで搾乳できる乳量が増加し、酪農家の収入拡大につながった事例もあり需要は増加しています。2020年は外食産業が低迷し、特に高級牛肉や豚肉の需要が急減したことや、学校の休校による生乳需要の減少などにより、酪農家・畜産農家において事業の不透明感が高まっていますが、飼育環境の改善を目的とする導入が増えており、堅調に拡大するとみられます。
5.家畜モニタリングシステム
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2020年見込 |
前年比 |
2030年予測 |
2019年比 |
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28億円 |
116.7% |
50億円 |
2.1倍 |
肉牛や乳牛に加速度センサーなどを内蔵したタグを装着し、活動量や反芻・採食行動などを検知したり、体内に温度センサーを留置し、体温変化などを検知したりするモニタリングシステムを対象とします。
以前は搾乳ロボット/システムにおける個体管理の目的での導入が中心であったため、大規模酪農家を中心に搾乳ロボットに合わせて海外メーカーの製品を輸入するケースが多かったです。近年は日系企業によるクラウドベースの比較的安価な製品が増加し、発情検知や分娩監視、健康状態・疾病監視を目的に小規模から大規模の酪農家・畜産農家で普及が進んでおり、市場は拡大してきました。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、新規の営業活動が制限されるなど不安要素はありましたが、農林水産省の支援策である「経営継続補助金」によって導入検討が増加するなど、前年比16.7%増が見込まれます。ただし、外食産業の低迷による高級牛肉の需要急減や学校の休校による生乳需要の減少など、酪農家・畜産農家において事業の不透明感が高まったことで新規投資意欲が減退しており、市場への影響が懸念されます。
【参考】本記事で使用した「農林水産ビジネスの最前線と将来展望2020」に掲載している調査対象市場
農業
- 完全人工光型植物工場
- 養液栽培プラント
- ガラス/フィルムハウス
- 栽培環境制御装置
- 灌水/給液管理装置
- 栽培用空調機器
- 植物育成用光源
- 栽培環境モニタリングシステム
- 水田水管理システム
- GNSSガイダンスシステム/自動操舵システム
- 農業用ロボット
- 農業用ドローン/ドローン活用サービス
- 生産管理システム
水産業
- 陸上養殖システム
- 沖合養殖システム
- 水産用水温調節機器
- 水産用光源
- 漁業環境モニタリングシステム
- 自動給餌システム
- 水産用ドローン
畜産業
- 閉鎖型畜舎システム
- 畜産用空調機器
- 畜産用光源
- 家畜モニタリングシステム
- 畜産用ロボット
- 畜産用ドローン活用サービス
次世代注目ビジネス事例(30事例)
◆本記事は「農林水産ビジネスの最前線と将来展望2020」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。