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5兆円規模まで拡大する燃料電池システム市場を調査。2030年度の世界市場を予測

株式会社富士経済は、直近ではトラック・バス用の大幅な伸び、燃料電池車(FCV)での新型車種の発売があり、今後はモビリティのゼロエミッション化の実現に向け各国で普及が期待される燃料電池システムの世界市場を調査しました。その結果を「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめました。

この調査では、燃料電池システム市場を用途別、エリア別、タイプ別に捉え、PEFCとSOFCのスタックや主要部品についても現状を把握し、将来を予想しました。

なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。

「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」の全体サマリー

1.燃料電池システムの世界市場

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

3,278億円

122.1%

4兆9,581億円

18.5倍

2020年度の市場は前年度比22.1%増の3,278億円が見込まれます。

最も規模が大きいのは産業・業務用であり、市場の30%以上を占めています。米国では導入による法人税の控除が受けられること、韓国では発電事業者が一定割合を再生可能エネルギーや燃料電池などの新エネルギーで発電することが義務付けられていることから、普及が進んでいます。2020年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響により施工が遅れたことで減少しますが、2021年度は施工の遅れが解消されることに加え、韓国では堅調な需要が続き、米国では控除終了前の駆け込み需要が想定されることから、伸びが予想されます。

家庭用は日本を中心に普及しています。日本では新型コロナウイルス感染症流行の影響により2019年度末の導入が滞りましたが、2020年度に実績が上乗せされ伸びています。しかし長期的には、補助金の減額などにより、伸びは緩やかになるとみられます。

最も伸びが高いのはトラック・バス用であり、前年度比71.3%増が見込まれます。長距離・大型車両は燃料電池の導入メリットが大きいことに加え、トラック・バスは決まったルートを移動することが多いことから水素インフラの整備を効率的に進められるため、モビリティの中でいち早く普及していくと予想されます。

燃料電池システムはスケールメリットによるコスト削減の余地が大きく、2025年度からは各用途で普及に伴うコスト低減により徐々に補助金依存からの脱却が進み、2030年度の市場は2019年度比18.5倍の4兆9,581億円が予測されます。

長期的にはFCトラック・バスに加え、FCVがけん引するとみられます。モビリティのゼロエミッション化を実現する手段の一つとして、各国の長期的な普及政策により水素インフラの整備とともに、急速な拡大が予想されます。また、スタックの多用途展開による多様なモビリティの電動化の進展も期待されます。

2.燃料電池システムの注目分野市場

トラック・バス用

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

全体

812億円

171.3%

1兆6,028億円

33.8倍

アジア

630億円

155.6%

1兆2,390億円

30.6倍

欧州

108億円

2.9倍

2,190億円

59.2倍

※アジア、欧州は全体の内数です

2020年代に欧州で引き上げられるCO2排出規制への対応を見据え、複数のメーカーが大型FCトラック・バスの開発を進めています。FCVより先にFCトラック・バスの普及を進めている中国と欧州のウェイトが高いです。

FCバスは、日本を含め世界各国で運用が始まっています。欧州では10ヵ国が参加するフリート実証が進んでおり、北米ではカリフォルニア州が2040年度までに州内の路線バスのゼロエミッション化を目標としています。

大型トラックは商用車のCO2排出量の6割を占めており、欧州の規制強化により大幅な低減が必要となることから、FCトラック化が進められています。

中国ではスタックを調達してシステム化するFCシステムメーカーが10社以上あり、徐々にスタックの国産化が進んでいることから、今後も市場をけん引していくとみられます。なお、日本でもFCトラック・バスの普及に向け実証規模の拡大やメーカーの新規参入が増えており、市場拡大の環境が整いつつあります。

燃料電池車(FCV)

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

全体

570億円

120.8%

2兆1,110億円

44.7倍

日本

30億円

88.2%

4,038億円

118.8倍

アジア

393億円

137.9%

6,794億円

23.8倍

※日本、アジアは全体の内数です

FCVは、乗用車を対象とします。

2020年度は、日本では東京五輪の開催延期に伴うFCV採用の先延ばしにより減少しますが、韓国で補助金などの導入支援を追い風に「NEXO」(現代自動車)の販売が伸びており、市場は拡大するとみられます。

2020年12月には混載ラインでも生産可能な新型「MIRAI」(トヨタ自動車)が投入されており、2020年代前半には新型「MIRAI」の欧州展開開始、現代自動車による日本展開開始、欧州や中国の自動車メーカーによるFCVの投入などが予想され、市場は拡大を続けるとみられます。一方、燃料電池や高圧水素タンクが高価であること、インフラ面では水素ステーションの整備が課題となっており、まずは社用車や公用車、タクシー、カーシェアリングなどフリートユーザーの採用が先行するとみられます。

2025年度以降は、世界的な脱炭素化の動きと環境規制などの各種政策に加え、先行してトラック・バスの普及を進める中国も含め、FCVの量産技術・量産体制が確立されることにより、徐々にスケールメリットが現れ始め、政府の補助金や支援策から自立した市場が形成されていくとみられます。なお、日本では、HVとの価格差を現状の300万円程度から、2025年度頃に70万円程度まで縮小するという目標値が掲げられています。

3.燃料電池スタックの世界市場

2020年度見込

前年度比

2030年度予測

2019年度比

PEFC

282億円

121.6%

7,749億円

33.4倍

SOFC

129億円

81.6%

282億円

178.5%

合 計

411億円

105.4%

8,031億円

20.6倍

燃料電池スタックの世界市場は2020年度で411億円が見込まれます。

PEFCは、市場が家庭用から立ち上がりましたが、現在ではFCV、トラック・バス、フォークリフトなどモビリティ分野が中心です。トヨタ自動車や現代自動車などFCVの量産化を進めるメーカーが、燃料電池スタックの用途開拓を進めており、今後はトラック・バスやFCV向けの拡大とスタックのコスト低減が進むことで、その他のモビリティ分野での採用も広がるとみられます。

中国では、中核技術の獲得のために外資系企業との合弁が行われていましたが、部品の品質や部材メーカーの技術力が向上したことで、中国のスタックメーカーやシステムメーカーは、中国製部品による内製化を進めています。

SOFCは、発電効率の高さから定置分野を中心に採用されています。一方、モビリティ分野では、作動温度が750℃から1,000℃と高温なため、研究開発レベルにとどまっています。量産技術の確立やセルスタックの設計、材料開発によりコストの低減が図られており量産メーカーは限定的ですが、今後600℃前後の低温作動化が可能となるメタル支持型スタックの量産化が進むことで、参入プレイヤーの増加が期待されます。

【参考】本記事で使用した「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」に掲載している調査対象市場

燃料電池システム市場

  • 産業・業務用
  • 家庭用
  • 燃料電池車(FCV)
  • トラック・バス用
  • 産業用車両
  • その他駆動用
  • ポータブル/バックアップ用

スタック部品市場

PECFスタック

  • 電極材
  • 電解質
  • セパレーター
  • GDL

SOFCスタック

  • 電極材(アノード)
  • 電極材(カソード)
  • 電解質
  • 金属インターコネクター(金属IC)

◆本記事は「2020年版 燃料電池関連技術・市場の将来展望」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。