株式会社富士経済は、カーボンニュートラル実現に向けた重要アプリケーションとして注目されるヒートポンプを活用した空調・暖房、給湯機器の世界市場を調査し、その結果を「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2025」にまとめました。
この調査では、住宅分野、業務・産業分野、その他(冷凍・冷蔵、輸送・移動体)分野の計19品目の空調・暖房、給湯機器の世界市場について、熱源別や用途別、エリア別の需要動向などを整理しました。また、次世代技術として4品目の国内市場を捉えたほか、ヒートポンプ機器を開発する上で重要な冷媒やコンプレッサーの動向についても把握しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2025」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
◆当該資料の全体サマリー
空調・暖房、給湯機器19品目の世界市場(電気式・燃焼式)
2024年の世界市場は、29兆6,155億円となりました。直近の市場拡大要因は、需要増加に加え、資材や人件費の高騰による製造コスト上昇の影響も大きいとみられます。脱炭素化の潮流の中で、先進国においては燃焼式から電気式、水冷から空冷が共通のトレンドであり、燃焼式の熱源機器に対する補助金の見直しや流通規制が今後一層強まっていくことで、住宅向け、業務・産業向けともにヒートポンプ機器が伸長し、2040年の市場は64兆8,910億円が予測されます。
エリア別には、ルームエアコンなど空調機器の普及率が低いインドやASEANでの需要増加が市場の拡大をけん引するとみられます。また、人口や世帯数の多さから需要が大きい中国での都市開発における低炭素化需要と暖房でのヒートポンプ機器の普及が拡大を後押しするとみられますが、不動産不況からの脱却が今後の成長には不可欠となります。中長期的には欧州や北米において、カーボンニュートラル実現に向けた電化推進による伸長が期待されています。特に環境対策で世界をリードする欧州では「REPowerEU」政策にて2030年までに欧州域内でヒートポンプ6,000万台の導入を目標として掲げており、燃焼機器からヒートポンプ機器へのシフトを促す規制および補助金政策などに取り組んでいます。
また、温暖化対策だけではなく、オゾン層保護を目的に、ヒートポンプ機器で採用される冷媒に対しても段階的に使用制限が設けられています。近年ではFgas規制やPFAS規制などが発表され、ヒートポンプ機器メーカーは、繰り返し強化される冷媒規制に対応しつつ、環境性能や安全性に優れ、かつ高性能な製品の開発を求められています。
国内市場は、2024年に2兆1,059億円となりました。今後は、住宅向け、業務・産業向けともに、ヒートポンプ給湯器が市場をけん引するとみられ、燃焼式は減少が予想されます。
新築物件においてはZEHやZEBなどでヒートポンプ機器の導入が予想されますが、人口減少に伴い住宅の新設着工数は減少しており、業務・産業施設は一部で着工数の増加により微増しているものの、中長期的には減少していくとみられます。
そのため、課題はストック建築物におけるヒートポンプ機器の採用拡大であり、住宅では給湯機に対する補助金などによる導入が期待されます。業務・産業では、業種によっては低炭素化目標が具体的に掲げられており、電化に伴う脱炭素効果は大きいことから、助成制度の拡充などによる更新時のヒートポンプ機器の導入が期待されています。
◆注目個別市場サマリー
1.ルームエアコン
2024年は日本や欧州、ASEAN、インドでの夏の平均気温上昇により空調ニーズが高まり、市場が拡大しました。2025年は、ASEANでは天候不良によりニーズが停滞していますが、中国では前年からの補助金継続、インドでは9月下旬からの家電購入における税金軽減といった需要喚起策が追い風となり、市場は微増するとみられます。
今後は、普及率が低く人口増加が期待されるASEANやインドにおいて、経済成長により住宅の快適性向上を目的とした導入が進み、市場拡大をけん引すると予想されます。なお、ASEANでは低価格な冷房専用機の需要が高く、インドでは日中と夜の温度差が激しいことから冷暖両用機のニーズが高いです。また、中国内陸部や農村部での普及も拡大に寄与するほか、成熟市場である欧州や北米でも温暖化の影響により寒冷地域への普及が進むとみられます。
国内では、2027年からルームエアコンの省エネに対してトップランナー方式の新基準が適用され、求められる省エネ効率が上がるため、各社による値上げが予想されます。単価上昇により市場は拡大しますが、台数ベースでの減少など一時的な需要の減退が懸念されます。また、中長期的には単身世帯が増えることで世帯数は増加する可能性がありますが、一世帯あたりの使用台数が減少するため、市場は縮小推移が予想されます。
冷媒としては、現在日本、中国、欧州、インドではR32が、北米とその他ではR410Aが主に採用されています。今後はキガリ改正に準じて、冷媒の低GWP化が求められることから、R290などの自然冷媒や、HFO混合冷媒の採用が進むとみられます。しかし、これらの低GWP冷媒を使用する場合には、冷媒漏れ対策強化や機器の構造を変えて効率を上げる必要があるため、一台あたりの価格上昇が予想されます。なお、R290は可燃性であることもあり、日本で採用するメーカーは少ないとみられます。
2.業務用ヒートポンプ給湯機
グリーンビルディングの普及拡大の流れを受け、新設案件での導入機運が高まっていることに加え、設備改修時のカーボンニュートラルな熱源の採用が増加しており、中国と欧州を中心に市場が拡大しています。
最大の需要地である中国では、北部エリアを中心に2023年頃から伸びており、コロナ禍以降需要が回復している宿泊施設やリゾート施設、学校、病院が主な導入先となっています。欧州では、フランスやドイツ、イタリア、英国などで需要が高く、特にフランスは電気料金が比較的安価であることから導入が進んでいます。
冷媒としては、2024年時点ではR410Aの採用が多かったですが、冷媒規制が厳格化する中でA2Lの採用に踏み切っているメーカーが散見されます。特に中国ではモントリオール議定書の中国実施国家計画(2025年ー2030年)によりHFCが規制対象に入ったことで、A2Lや低GWP冷媒への移行が進み、欧州ではFgas規制への対応を目的にR290採用商品のラインアップが増えるとみられます。なお、日本ではR744(CO2)が中心ですが、世界的には局地的な需要となっています。
【参考】本記事で使用した「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2025」に掲載している調査対象市場
住宅分野
電気式/空調・暖房
- ルームエアコン
- 住宅向けヒートポンプ温水暖房機
- 地中熱利用ヒートポンプ
電気式/給湯
- 住宅向けヒートポンプ給湯機
- 電気温水器
燃焼式/空調・暖房
- 住宅向け燃焼式温水暖房機
燃焼式/給湯
- 住宅向け燃焼式給湯器
業務・産業分野
電気式/空調・暖房
- パッケージエアコン/ビル用マルチエアコン
- チリングユニット
- ターボ冷凍機
電気式/給湯
- 業務用ヒートポンプ給湯機
燃焼式/空調・暖房
- ガスエンジンヒートポンプエアコン
- 吸収式冷凍機(冷温水発生機)
- 蒸気ボイラ(貫流ボイラ)
燃焼式/給湯
- 業務用温水ボイラ
その他
冷凍・冷蔵
- 冷凍・冷蔵ショーケース
- コンデンシングユニット
輸送・移動体
- カーエアコン
- 電動自動車用カーエアコン
次世代技術 ※国内市場のみ
- 排熱回収ヒートポンプ
- 蒸気/熱風発生ヒートポンプ
- 磁気ヒートポンプ
- カーボンニュートラル燃料ボイラ
◆本記事は「ヒートポンプ 温水・空調市場の現状と将来展望 2025」より一部取り上げ、概要をご紹介しました。当該資料の目次や内容の詳細はこちらでご紹介しています。