株式会社富士経済は、現行のリチウムイオン二次電池(LiB)と比較して高い安全性や高容量化を実現する可能性があり、現状日本が世界をリードし、国レベルで開発・実用化に向けて注力している全固体電池の市場を調査しました。その結果を「2020 次世代電池関連技術・市場の全貌」にまとめました。
この調査では全固体電池4品目に加え、非リチウム系二次電池7品目、新型リチウム二次電池8品目、次世代電池材料6品目の市場を調査・分析しました。加えて、応用製品(アプリケーション)3品目における次世代電池の採用動向や次世代電池の製造プロセスについても整理しました。
なお、本記事以外にも、より詳細な市場構造、市場シェア、参入企業動向などをお知りになりたい方は、「2020 次世代電池関連技術・市場の全貌」をご購入の上、ご覧いただければ幸いです。
「2020 次世代電池関連技術・市場の全貌」の全体サマリー
1.全固体電池の世界市場
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2020年見込 |
前年比 |
2035年予測 |
2019年比 |
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全体 |
34億円 |
178.9% |
2兆1,014億円 |
1,106.0倍 |
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硫化物系 |
- |
- |
1兆5,775億円 |
- |
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酸化物系 |
14億円 |
- |
4,452億円 |
- |
※硫化物系、酸化物系は全体の内数です
現状、酸化物系と高分子系の市場が立ち上がっており、2020年は34億円が見込まれます。当面は酸化物系、高分子系がけん引しますが、将来的にはxEV向けの需要を中心とした硫化物系の伸びが期待されます。錯体水素化物系は2030年頃から市場が立ち上がるとみられます。
硫化物系
硫化物系は、参入電池メーカーが2020年代前半の実用化に向けて研究・開発を進めており、現状はサンプル出荷が開始された段階です。当面の採用は宇宙向けなどの特殊用途に限定されると想定されます。
量産技術の確立などの面で課題はありますが、将来的にはxEV向けで需要増加が期待されます。2020年代前半には、大手自動車メーカーが硫化物系を搭載したEVを発売するとみられ、2025年頃から採用車種の増加が予想されます。以降、中国電池・自動車メーカーの参入も予想され、市場が活発化すると想定されます。2030年頃から本格的な普及段階に入り、他モビリティにも採用が波及するとみられ、2035年の市場は1兆5,775億円が予測されます。
製造プロセスは量産や大面積化が可能な湿式塗工法が有力です。この製法では現行のLiBの製造技術が応用できるため、量産規模の拡大に伴い低コスト化が進展し、ESS(エネルギー貯蔵システム)など他大型用途への展開も期待されます。
酸化物系
酸化物系は、タイプごとに異なるアプリケーションでの採用を目指して製品化が進められています。大型用途を想定するバルク型(全固体/疑似固体)と、小型用途で実用化が進む薄膜型/積層型に分けられます。
バルク型は、xEVをターゲットとして研究開発が進められていますが、全固体電池の実用化は技術的なハードルが高いため、現時点では疑似固体電池が製品化されています。疑似固体電池は、固体電解質を主材料としてイオン液体やゲルポリマーを微量添加しており、全固体電池と比べると性能は劣ります。しかし、現行のLiBと比べて安全性が高く、パック当たりの体積エネルギー密度向上、入出力特性の改善が進むなどの利点があるため、2020年代前半にはEVへの搭載が予定されており、普及が進むとみられます。バルク型の全固体電池については、中国電池メーカーによる疑似固体電池からの技術進展や、欧米ベンチャー企業による研究開発により、2030年代にxEVに搭載可能な製品が実現するとみられます。
薄膜型は、2013年頃から製品化が進められており、ウェアラブル機器やICカード、IoT関連の採用が期待されています。薄型で、省スペースや基板実装が可能などの特徴はありますが、製造コストが高く、容量の増加が難しいため、採用アプリケーションは限定されるとみられます。積層型は、MLCCやチップインダクタの技術が高い日本電池メーカーが積極的に展開しています。小型で耐熱性や安全性に優れるなどの利点があり、基板実装が可能であるためアセンブリコストや搭載スペースの削減も期待されています。センサーや無線通信モジュールなどのIoT関連、ウェアラブル機器、太陽光発電と組み合わせたエネルギーハーベスティングなどでの採用が期待されます。
高分子系
高分子系は、EVやEVバス、ESS向けの展開が一部でみられ、現状は欧州での需要が大部分です。安全性が評価されており、EVやESSで採用が進むと予想されます。中国電池メーカーが製品化・量産化を進めており、容量をはじめとした性能面での課題が改善されることで、2030年以降に市場が本格化するとみられます。
錯体水素化物系
錯体水素化物系は、2020年代前半まで材料の基礎開発と実証実験が進められ、2025年前後の商品化が期待されます。参入電池メーカーはEVでの採用をターゲットとしていますが、性能評価や量産体制の整備に時間を要するため、耐熱性や高容量密度を必要とする特殊用途やウェアラブルなどの小型用途から採用が始まるとみられます。
xEV向け全固体電池の世界市場(容量ベース)
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2020年見込 |
2035年予測 |
2020年見込比 |
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44MWh |
101,600MWh |
2,309.1倍 |
xEVは、全固体電池の搭載により、現行のLiBと比べて航続距離延長や安全性の向上が期待できるため、量産技術の確立によって将来的な採用増加が予想されます。当面は高級車種を中心に普及が進むとみられます。
現状、高分子系の採用が欧州の一部EVバスなどでみられます。高分子系以外は技術的なハードルが高く、界面形成の課題や量産技術が未整備であることから、実用化を優先して酸化物系の疑似固体電池による製品化が進められています。
当面は、高分子系や酸化物系の疑似固体電池の採用が中心になりますが、硫化物系は安全性に優れ、リチウムイオン輸率が高く急速充放電が可能なことなどから注目されています。2020年代前半には硫化物系を搭載したxEVが発売される予定であり、2025年頃から硫化物系の需要が増えるとみられます。
各自動車メーカーは、全固体電池の開発や関連するスタートアップ企業への出資に積極的であるため、全固体電池の採用は2030年代に急伸すると予想されます。
2.非リチウム系電池
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2020年見込 |
前年比 |
2035年予測 |
2019年比 |
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全体 |
1億円 |
- |
555億円 |
- |
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ナトリウムイオン |
1億円 |
- |
493億円 |
- |
※ナトリウムイオンは全体の内数です
金属空気、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムの各二次電池を対象としました。レアメタルフリーや現行のLiBを超える大容量などの利点から、電池メーカーや関連機関が研究開発を進めています。
ナトリウムイオンは、欧州や中国のベンチャー企業を中心に実用化を目指した研究開発が進められており、徐々にではありますが、ESSやUPS(無停電電源装置)などのエネルギー貯蔵、バックアップ電源用として市場が形成されるとみられます。また、現行のLiBと比べて入出力特性に優れることなどから、商用車を中心にxEV向けでも採用が進むと予想されます。ESSやxEV向けが中心となりますが、量産規模の拡大による低コスト化が進めば、鉛蓄電池の代替として始動用バッテリーや電動二輪車などでの採用も期待されます。
金属空気、カリウムイオン、マグネシウム二次電池は、2030年以降に市場が立ち上がるとみられます。
【参考】本記事で使用した「2020 次世代電池関連技術・市場の全貌」に掲載している調査対象市場
次世代電池
全固体電池
- 硫化物系全固体電池
- 酸化物系全固体電池
- 高分子系全固体電池
- 錯体水素化物系全固体電池
非リチウム系二次電池
- 金属空気二次電池
- ナトリウムイオン二次電池
- カリウムイオン二次電池
- マグネシウム二次電池
- フッ化物イオン二次電池
- 有機二次電池
- バイポーラ型鉛蓄電池
新型リチウム二次電池
- 全樹脂電池
- クレイ型電池
- グラフェン電池
- イオン液体採用電池
- 高濃度電解液採用電池
- リチウム硫黄電池(Li-S電池)
- Si系負極採用電池
- 金属Li負極採用電池
次世代電池材料
- 電解質
- 正極活物質
- 負極活物質
- セパレータ
- バインダ
- 集電体
次世代電池応用製品
- 自動車
- 定置用電力貯蔵システム
- 小型民生用途/その他有望用途
◆本記事は「2020 次世代電池関連技術・市場の全貌」より一部取り上げ、主要なポイントを抜粋しました。調査レポートの目次や調査サマリーなど詳細はこちらでご確認いただけます。